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向学新聞2011年9月号記事より>


東京大学が秋入学を検討
 

21世紀の日本担う人材を育成  グローバル化の遅れを打開

 東京大学が、入学時期を春から秋へ移行する検討を始めたことが明らかになった。グローバルスタンダードの秋入学・春卒業に合わせ、外国人学生の受入れ数増加や、日本人学生が海外留学しやすい環境を作る。大学全体のグローバル化と世界で通用する日本人学生の育成が狙いだ。しかし、企業・官庁の採用活動や大学入学までの空白期間など解決しなければならない課題は多い。

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 欧米諸国の多くは秋入学が一般的で、日本人学生の留学や外国人学生の入学の際、学期がずれ時期が合わないなどの弊害が生じている。そのため日本の春入学・春卒業が、大学の国際化の遅れや日本人学生の留学離れを招く一因だとされている。田中明彦東京大学副学長は、「世界で通用する人材をどれだけ作り出していけるかが一番大きな問題」と強調し、「21世紀の日本を引っ張っていく人材をよりグローバル化させるには、今の制度では制約が多すぎる」と指摘する。そこで、今年4月から東京大学の清水孝雄学術担当理事を座長とするワーキンググループが秋入学の検討を始めた。

 東京大学が公表した資料によると、東京大学の平成21年の外国人留学生比率は7・6%に留まっている。世界の有力大学に比べて低い水準で、国際化の遅れが目立つ。世界の有力大学の外国人留学生比率は、シンガポール国立大学(シンガポール)では30%、オックスフォード大学(英国)は29%、マサチューセッツ工科大学(米国)は27%、ハーバード大学(米国)は20%となっている。東京大学は2020年までに、留学生比率を12%以上にまで引き上げようとしている。

 京都大学の森純一国際交流推進機構長は、「もうグローバルスタンダードの時代で間違いなく世界中で人とモノが動いているのに、いつまでも日本だけの基準で学生を動かすのは少し無理がある」と、東京大学の秋入学に肯定的だ。しかし、「簡単な問題ではない。相当な議論がいる」とも述べ、実現への課題の多さも指摘している。

 秋入学が実現した場合、卒業は5月から7月頃の時期になる。新卒の春入社を行う企業に対して田中東京大学副学長は、「例えば通年で採用してもらうなど、卒業から入社まで時間をかけない方がいい」と採用活動の多様化を求めた。

 高校卒業から大学入学までの空白期間の問題もある。大学合格者にはこの期間に、ボランティア、海外留学、インターンシップなどを体験させる「ギャップイヤー」の適用を検討している。東京大学の秋入学検討は、教育のグローバル化に出遅れる日本の大学の現状打開に向けて、大きな布石を打った。




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