<向学新聞2011年11月号記事より>
国際標準と独自性発揮も必要
第2回日中大学フェア&フォーラム開催 留学生へのケア強化促す
10月9日から10月11日にかけて日本と中国の主要な大学約100校や研究機関などが集い、「第2回日中大学フェア&フォーラム」が開催された。主催は独立行政法人科学技術振興機構中国総合研究センター。大学・産業界などの代表者が集ったパネルディスカッションや、日中の大学がブース出展し、留学促進に関する活動の紹介を行うフェアが催された。
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パネルディスカッション「大学の国際化とグローバル人材の育成」では、外国語による教育について活発な議論が交わされた。会場の大学関係者からは、「日本の大学が英語による専門科目の授業を増やす場合、気を付けるべき事は何か」という質問が挙がった。中国政法大学副学長の時建中氏は、「法律の場合、英語に訳せない部分もあるため、必ずしも全て英語で行う必要はない」と述べた。別のパネラーは、「日本の大学は英語教育を強化すべきだが、留学生には日本語を習得してもらうことが必要。文化を伝えるのは言葉で、留学した国の言葉を勉強しなければ、その留学は成功したとはいえない」と、日本文化・日本語教育の意義を主張した。いっぽう、早稲田大学副総長の内田勝一氏は、「海外との取引が盛んになっていく中で、日本の法律の特殊性を英語で発信しなければ外国の人には分からない。今の時代、発信するためには英語を使わざるを得ないのが一つの事実」だとして、国際社会での英語の重要性を指摘した。筑波大学の辻中豊副学長は、「外国語に通訳可能な普遍的な論理を発信することが重要」と、内容の重要性を訴えた。日本の大学が国際化するためには、英語による教育の拡充と、日本語教育や日本文化の発信の充実という、二つの課題を解決しなければならないことが示された。世界標準に合わせるだけではなく、日本の独自性を発揮する真の国際化が大学には求められているようだ。
また、「日中両国の留学生政策と留学帰国者の有効活用」をテーマとするパネルディスカッションでは、中国留学服務中心の白章徳氏が、日本の大学に対し「留学生のケアをもう少し手厚くして欲しい」と述べた。会場の参加者からは、日本への元留学生のネットワーク作りや、日本人学生の留学促進について、学生へのケア不足の傾向を指摘する意見があった。名古屋大学の関係者からは、「これまで日本の大学に足りなかったのはケアで、大学側の意識革命が必要」と反省を促す指摘があった。
一方、留学する日本人学生を増加させるためには、高校からの環境作りと産学の連携が重要であるとの意見が出された。文部科学省の奈良人司氏は「奨学金の充実などで、高校生から留学しやすい環境を作るべき」と訴えた。また、「海外にある日系企業でのインターンシップを実施し、留学の経験を就職に繋げるプログラムを企画するなど、大学と企業のタイアップも必要」と述べ、日本人留学生の出口政策の必要性を強調した。
当日はその他、大学アピール大会や中国人留学生向けの日本企業就職情報セミナーなども実施された。ブース出展した東京大学の担当者は「優秀な学生が来ることで、優れた研究ができる。中国からの留学生にも多くPRしたい」と参加理由を述べた。名古屋大学のブース担当者も「優秀な学生に来てもらい、グローバル人材を育成したい」と述べ、中国からの留学生への期待がうかがえた。日本への留学生は中国出身が最も多く、日本から中国へ留学する学生も韓国、米国に次いで三番目に多く、互いに多大な影響を与え合っている。今後の日中交流の一層の発展が期待されるところだ。
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