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向学新聞2012年11月号記事より>


オールジャパンで留学PRを
 

東大が英語コース開始

G30の連携で相乗効果

 G30(国際化拠点整備事業)採択校である東京大学教養学部で初めて、英語で学位が取得できる「PEAK」が10月から開始された。シンガポールや韓国など11カ国・地域から27名の学生が入学した。G30採択校が英語コースを続々とスタートさせている中、国際大学ランキングでアジアトップレベルの東大が加わることで、国際競争力の活性化に期待がかかる。

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 PEAKの出願要件は、高校卒業までのうち最低10年間、日本語以外で教育を受けた経験を持ち、TOEFLiBTが最低100点必要となる。国籍は問わず、受入れ人数は約30名。書類提出と入試担当者が海外現地まで赴いて面接する、いわゆるアドミッションオフィス(AO)入試を実施した。約30カ国・地域を訪問しPRした結果、出願者数238名を集め、合格者38名、最終的に27名が入学した。約3割が入学を辞退し、オックスフォード大学(英)など欧米の大学に進んだという。しかし、ハーバード大学(米)など世界のトップ校でも入学辞退率3割前後は珍しいことではない。PEAK担当の矢口裕人准教授は「3割辞退は全く悪い数字ではない。合格者のうち7割が入学してくれたのは本当に喜ばしいことだ。期待を感じる」と話す。また、「世界中の優秀な学生は様々なチャンスを持っている。東大を選択肢の一つとして考えてもらえるように努力しなければいけない」と主張する。PEAKでは、優秀な学生には4年間の授業料と生活費を負担し、勉強に集中できる環境を提供している。さらに、「少人数教育を行い、入学後も全員と面談するなどきめ細やかな指導をしている。なぜこの小さなプログラムにこれ程投資をするのかといった意見もある。しかし、PEAKが特別なのではなく、PEAKの強みを全体に広げたい。PEAKは今後の東大が進むべき道の実験場だ」と強調する。今後、PEAKの学生とそれ以外の学生の交流が授業内外で活発化することで、グローバルキャンパスの実現を目指す。
 
 G30採択校である慶應義塾大学も昨年から、英語コースである「GIGAプログラム」をスタートさせた。昨年と今年で9名ずつ入学し、合計18名が学んでいる。慶大ではこれまでの経験を踏まえ、来年から出願資格を変更する。今年までは、中学・高校の6年間を海外の教育制度で学んだ経験が必要とされてきた。しかし、高校在学時に1年間日本に交換留学したため、「中高の6年間を海外の教育制度で学ぶ」という要件を満たすことができず、出願資格を満たさない学生が複数いた。そのため、次回からは高校2年間を海外の教育制度で学んだ経験を持つよう条件を変更する。慶大の萩野達也教授は、「本質的な部分ではない障害はなくしたい」と話し、その他にも出願時の提出書類を変更するなど入試改革を進めている。 
 また、各大学の独自プログラムの広報だけではなく、G30採択校が連携することで、相乗効果を発揮することが期待される。東大のPEAKでは国際日本研究と国際環境研究を、慶大のGIGAプログラムではICTとガバナンスを学ぶことができるが、他のG30採択校では、海洋生物や機械工学、国際社会学など、それぞれの特性に合わせた英語コースが提供されている。それぞれの強みを活かし、一つになって世界にPRすれば日本全体に益をもたらすことができる。
 
 実際に今年5月にシンガポールで開催されたG30の留学フェアでは、各大学が日本留学全体についてや、他大学の紹介を行うなどオールジャパンで日本留学をPRした。9月にもタイでG30留学フェアを実施し、729名が来場した。約100名近くが回答した参加者アンケートでは、9割以上の学生がG30を通して日本に留学したいと回答している。慶大湘南藤沢キャンパスの森澤珠里課長は「英国の場合、ブリティッシュカウンシルという機関を通して、国を挙げて英国留学をアピールしている。日本も1大学よりも、全体で世界に訴えた方が効果的だ。実際にG30の知名度も徐々に向上してきている」と強調する。



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