<向学新聞2013年5月号記事より>
日中韓トップ大学で複数学位取得
国際的ネットワーク構築へ 文科省 「キャンパス・アジア」パイロット事業
日中韓のトップ大学である東京大学・北京大学・ソウル大学校が、3方向によるダブル・ディグリープログラムを4月から開始した。交換留学やサマースクールの共同開催、教職員の交流も行われる。東大が北京大・ソウル大とダブル・ディグリープログラムを実施するのは初めての試みとなる。
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日中韓による大学間交流は、文部科学省が2011年に採択した「大学の世界展開力強化事業」の一つ「CAMPUS Asiaパイロットプログラム」としてスタートした。東大の公共政策大学院は同事業への採択を受けて、北京大の国際関係学院とソウル大の国際大学院との間で2012年から交換留学を開始。今年4月から北京大、ソウル大への留学を盛り込んだ「公共政策キャンパスアジアコース」を開設した。東大生の送り出しと、毎学期に北京大・ソウル大から5名の留学生を受け入れる。
同コースでは例えば、東大で1年、ソウル大で1年、北京大で半年学ぶことで東大・ソウル大の修士号と北京大の認定証を取得できる。ダブル・ディグリー取得先は、東大に加え北京大かソウル大かで学生が自由に選択できる。 授業は英語で行われ、3つの大学を周り計2年半で修了する。東大では専門職学位である公共政策、北京大では法学、ソウル大では国際関係の学位が取得でき、高度な専門性と幅広い知識を習得できる。東大公共政策大学院の伊藤隆敏院長は、「日本人学生と外国人学生が同じ釜の飯を食べて勉強する機会は貴重だ。国際的なネットワーク構築に活かせる」と意義を話す。
同コースの栗原隆太郎さんは入学の動機について、「元々中国に興味があり中韓の関係も学びたいと思っていた。東アジアにフォーカスしたプログラムや三ヶ国のキャンパスで学べる点が画期的だ」と話す。また、チェ・へミンさん(韓国・ソウル大出身)は、去年の夏から半年間北京大で学び、東大で修士号を取得するため今春来日した。チェさんは、「ここでは領土や歴史問題もオープンマインドでじっくり議論することができる。ソウル大と北京大では同じ科目名でも見方が全く異なるが、違う視点を理解することは非常に重要だ」と主張する。
文科省の「CAMPUS ASIAパイロットプログラム」では、東京工業大学は清華大学・韓国科学技術院と、九州大学は上海交通大学・釜山大学校とコンソーシアムを形成するなど計10事業が採択されている。
日中韓の間に横たわる様々な課題への解決には、人的交流が必要不可欠だ。三カ国による共同教育プログラムは、次世代のアジアを担う人材育成に期待がかかる。東大公共政策大学院の伊藤院長は、「今は色々と問題があるが、30年後には別世界になっているはずだ。目先のことではなく、20、30年後を見据えて教育しなければいけない」と強調する。
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