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向学新聞2015年5月号記事より>


日本の強みを世界へアピール
 

アセアン留学生と有識者が議論

 3月28日にアセアン諸国の留学生と有識者が集い「Japan Asean Youth Conference2015」(主催/一般社団法人日本国際化推進協会)が東洋大学で開催された。日本がより多くのアセアン留学生を受け入れるための課題などについて議論がなされた。

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画像の説明
議論の様子(写真提供/一般社団法人日本国際化推進協会)


 21世紀の成長セクターとして目されるアジアのなかでも、2015年にアセアン経済共同体が発足するアセアン地域は日本にとって非常に重要な存在だ。ディスカッション冒頭、文部科学省の渡辺正実学生・留学生課長が「2010年に企業が最も採用したい留学生の出身国・地域は中国だったが、2014年は東南アジアにシフトしている」と企業の採用戦略の変化を説明した。人材の供給源である日本の教育機関で学ぶ留学生数についても触れ、「日本語学校に留学するアセアン留学生は5年で数倍増加した。特にベトナムからの増加が著しい」と述べた。
 
 一方で、フォースバレー・コンシェルジュ株式会社の柴崎洋平代表取締役社長が、「日本企業がどれだけグローバル採用を進めるとしても、採用要件に日本語力を問わないケースはほとんどない。中国など漢字圏の留学生に比べアセアン留学生は漢字に馴染みがなく、このギャップをどう解決するかが課題だ」と問題を提起した。明治大学の横田雅弘国際日本学部長も、「アセアン留学生が日本の大学入学レベルの日本語を習得するためには漢字圏の学生より約1年長く時間がかかるため、かなりハードルが高い」と指摘。しかし、「だからこそ効果的な関係を構築できていなかった大学と日本語学校が連携するチャンスになりうる。大学入学の初年度に日本語教育を組み込むなど新しい教育システムが必要だ」と提案した。
 
 在日インドネシア留学生会のアディユダ・サドノさん(東京工業大学)は、アセアン留学生の状況について説明。2012年に日本に留学したアセアン学生は1999年と比べて2倍以上増加し1万人を越えたが、米国には約4万、英国にも3万人以上留学している。「留学前に取得できる日本の大学の魅力や環境についての情報が少ない。それに加え、日本留学後の将来像もイメージできない」と課題を指摘した。横田学部長も「プッシュ要因としてアセアン学生は海外に留学したいと考えているが、他国に流れてしまっては大変もったいない」と先行きを懸念した。
 
 海外での情報発信不足が課題にあがる一方で、これから世界に訴えるべき日本の強みについても議論された。柴崎社長は、「毎年1万~1万1000人の留学生が日本企業に就職し、留学ビザから就労ビザへの切り替え許可率は90%を越えている。先進国では突出した数値だ。日本に留学すれば一流企業に就職できるチャンスがあることを海外の学生は知らず、大きなアピールポイントになる」と強調した。
 
 これまで日本の留学生受け入れは中国・韓国など東アジアが主流だった。その流れが大きく変わりつつあるなか、世界中で留学生獲得競争が行なわれている状況を日本はより認識し、日本の強みを世界に訴えなければならない。語学サポートや大学・将来像の情報提供に至るまで、大きな改革が必要とされている。




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