向学新聞 2017年9月号
「30万人」に戦略的方策
文科省の有識者会議
文部科学省は8月21日、「高等教育機関における外国人留学生の受入推進に関する有識者会議」の報告書を発表した。「留学生30万人計画」を実現するため、より戦略的な方策を検討したものだ。
まず、受入れを促進すべき留学生を大きく二つのカテゴリーに分類。国として戦略的に受入れを促進すべき高度人材と、日本文化や日本社会に関心を持ち私費で来日を志す学生とに分け、それぞれに合った施策を施すべきだとしている。前者に対しては、学生から選ばれる良質な教育研究環境と大学のグローバル化、奨学金の整備を目指すこと。そして後者に対しては、学生の興味関心に合った多様で魅力あるカリキュラムを整備するよう促している。
教育の根底に据えるべき目的としては、「日本を理解し日本の友人となり、時に日本を支える留学生を育てていくこと自体が国益」であるとして、帰国後に日本との橋渡しとなるような「日本理解を有する人材」を戦略的に育成する方針を掲げた。そのために各教育機関は、専門分野の学習に加えて、日本の文化や伝統、近代化や経済発展の歩みと課題等を含む日本理解を促進する機会を提供する必要があるとした。
日本に関心を持つ留学生を呼び込む効果が高い短期プログラムについては、特定の教員にプログラム開発や受け入れ手配などの事務的負担が集中する傾向にあることから、学内資源を集約化し協力体制を構築するよう促している。
さらに、今後は外国人留学生の適切な受け入れ規模を検討しながら、プログラムによっては教育の質の向上と授業料の値上げを平行して行ない、世界水準の教育を可能にするような取り組みを国立大学等で試験的に導入することを提言した。
いっぽう留学生の就職の促進については採用企業側の意識変革も必要だとして、社内の受け入れマインドの醸成や人事処遇の柔軟性、対応力の向上を進めるよう促した。
また、欧米先進国からの留学生は母国のグローバル企業の日本支社なども就職先として考えられるため、日本にある外国商工会議所や大使館と連携した就職支援を推進することも提案している。
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