<向学新聞2017年10月号記事より>
クールジャパン 採用に指針
法務省がビザ許可事例公表
法務省入国管理局は9月22日、クールジャパン分野で就労を希望する留学生の在留資格許可の指針を公表した。「単純労働」とみなされるアニメ原画の絵付け作業や、外国人でなくてもできる服飾店や飲食店での販売・接客については、入社当初の一定期間のみ行ないその後専門性を活かせる業務に就くことを条件に、在留資格を認める。基準を明確にすることで企業の留学生採用を後押しし、クールジャパンの海外展開を促進する。
初期の研修なら販売・接客も可
許可の基準は、基本的には従来どおり、大学や専門学校で学んだ専門性を活かせる業務に就く場合は在留資格を認める。例えば専門学校のマンガ・アニメーション科を卒業しアニメ制作会社で創作活動に従事する場合や、美容専門学校を卒業し化粧品会社で海外進出のための企画・マネジメント業務に従事する場合などがこれにあたる。
また、入社当初に接客等の実地研修や、補助的な単純作業に就くことがあっても、それが在留期間の大半を占めずその後のキャリアステップが明確である場合は就労が許可される場合がある。
専門性を必要とする職務がどういうものかについて法務省は、指針で以下のように述べている。「学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的技術又は知識を必要とする活動であって、単に経験を積んだことにより有している技術・知識では足りず、学問的・体系的な技術・知識を要するもの」。
したがって実地でのOJTだけでできるような単純労働に就く場合は在留資格は認められない。専門学校で専門士を取得していても、在留期間の大半にわたってアニメ背景画の色付け作業など補助業務だけに従事したり、アパレルメーカーで創作活動を伴わない裁断・縫製だけに従事する場合は不許可となる。また、日本人なら4ヶ月で終わる実地研修を、外国人については研修名目で店舗を変えながら1年間に渡って販売・接客をさせるなど、研修が単純労働をさせるための名目に過ぎない場合も不許可となる。
政府がこうした指針を発表する背景には、在留資格審査の不透明さを改善し企業側の採用意欲を引き上げたい思惑がある。外国人留学生が卒業後に日本で就職するには就労可能な在留資格への変更が必要だが、職種によっては変更が許可されるかどうか不明なことが企業が採用に二の足を踏む原因となっていた。政府は2016年から留学生の就職率を現状の3割から5割へと引き上げる目標を掲げており、特に日本が強みとするアニメ、ファッションデザイン、食などクールジャパン分野で有望な外国人の定着を促し、産業の発展につなげたい方針だ。
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