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向学新聞 2017年12月号


インドでの日本語教育を拡充

大学・企業による人材誘致が加速


9月14日日印首脳会談での共同声明署名式(写真提供:内閣広報室)

9月14日の日印首脳会談での共同声明署名式
(外務省ホームページより)


 政府はインドでの日本語教育と日本語教師の養成を拡充する。


 今年9月14日の日印首脳会談で、「1000人の日本語教師の研修」と「100の高等教育機関での日本語副専攻コースの設置に向けた努力」などが合意された。


 在インド日本国大使館によれば、この研修は一定レベルの話者に日本語を教えられる力を身に付けさせる取組のほか、現職教師へのブラッシュアップ研修も含んでいる。実施については教師の確保も含め、国際交流基金の協力を得て行うことを想定している。


 また、日本語副専攻コースの設置については、日本語学科を持たない既存の工学系大学や経営系大学に副専攻として「日本語」を導入することで、「日本語の解るエンジニア」、「日本語とマネジメントの両方に知見がある人材」の輩出を促し、日本企業がインド市場にチャレンジしやすい環境を作ろうというのが狙いだ。日本語力を活かして日本での就職を目指そうとする学生が出てくれば、それが日本留学の導火線になることも期待している。


 こうした動きのいっぽうで、大学や企業がインド現地の優秀な人材を直接日本に誘致しようとする取り組みが活発になってきている。


 東京大学は、文部科学省が2014年から開始した「留学コーディネーター配置事業」でインドにおける拠点事業を受託。インドでリクルートを進めようとする日本の全ての大学に協力する役割を担い、現地の有力大学や高校への訪問を重ねながら日本留学のPRを進めてきた。2016年には日本留学フェアを29回主催し、日本留学説明会を9回開催。延べ124の大学が参加し、イベントの総来場者数は8594人に上った。


 東京大学インド事務所長の吉野宏氏は、現地での日本語教育強化は日本への留学増をもたらすと感じているが、PRに際しては、日本語学習のニーズを持ち合わせているとは限らない学生の実情に即した形で行っているという。「日本語を強調すると、日本語を習得しないと留学できないのだと誤解を生むので、『日本留学に必ずしも日本語は必要ない。日本での就職希望者は留学してから日本語を勉強して下さい。大学で無料で勉強できます』と説明しています」(吉野所長)。


 同事務所ではこうした対応をベースにしつつも、すでに日本語を学習しているインド人学生へは積極的なアプローチを展開している。日本留学増のために、大学の日本語教室との交流を強化。インド工科大学(IIT)カンプール校やIITマドラス校の日本語教室と連携し、留学説明会の開催や学生交流を行っている。2018年3月には東京大学の学生とともにIITカンプール校日本語教室を訪問する予定だ。また、高校で日本語を教えている日本人の教員と連携して現地の学校を訪問したり、教師の引率によるインド人生徒の日本訪問を支援したりしている。


 さらに、日本企業と連携し、留学・就職説明会を大学で開催する新しい取り組みも始めている。11月30日午後には東大主催の日本留学フェアをインド・ケララ州立コチ理工大で開催。IT分野で優秀な人材の宝庫であるインドに注目した島根県松江市からの申し出があり、島根県内のIT企業が参加した。松江市では、来年1月にコチ理工大学を含むケララ州の3大学から学生10名(+教員1名)を招聘し、島根大学での短期留学、圏域IT企業でのインターンシップを実施する計画だ。


 このように自治体側が予算を出して直接インド現地に出向いて留学生を獲得する動きは複数出てきており、富山県の製薬系企業は優秀な薬学人材を求めて留学生のための奨学金を設け、富山県内の大学で学んでもらった後は自社に就職してもらえるよう、入り口から出口までのルートを準備して現地に乗り込んだ。


 東大インド事務所ではこれら自治体や他大学等の取り組みの紹介と情報提供も行っている。


 現地での旺盛なPR活動が奏効し日本へのインド人留学生数は毎年着実に増加しており、2016年5月には1015名となり対2014年同期比では39・6%増となった。


 インドの18歳人口は約2400万人で日本の20倍。小学校1年生からコンピューター教育を行っており、飛び級制度で14歳でIITに入学した例もある。世界的企業のグーグルとマイクロソフトのCEOをはじめ、ITや金融、経営などの分野で優秀な人材を多く輩出している。



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