Top向学新聞日本で働く留学生OBたち>伝統×AIビジネス最前線(サイドストーリー) 株式会社ima 吉富愛望 アビガイルさん


向学新聞 2019年4月1日号>

仮想通貨の世界から
日本の伝統産業の世界へ


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よしとみ めぐみ アビガイル

早稲田大学、東京大学大学院にて物理学を専攻しヘリウムを研究。仮想通貨・ブロックチェーン系の企業で海外案件のプロジェクトマネジメント等を担当したのち、2018年より現職。

吉富愛望 アビガイルさん





動物の骨格から、基礎物理学、そして仮想通貨へ

――ユニークなご経歴をお持ちですね。

 私は物事を突き詰めて考えるのが好きなんです。
 中学時代には動物の骨格に興味を持っていました。母の出身国イスラエルの砂漠を散歩していたとき、案内人が狐のあごを拾ってきてその生活を推測し教えてくれたのですが、その痕跡からストーリーを考えるのが面白いので勉強しようと思ったのです。でも高校生になって、先生に「生物を勉強するならすべての学問の基礎である物理からだ」といわれたことがきっかけで、その後大学院まで基礎物理学を極めたのですが、そこまで来るともう生物学とは遠ざかりすぎてしまったことに気づきました。じゃあ一回ほかに面白いと思えるものを探そう、と考え直したときに出会ったのがブロックチェーンや仮想通貨の世界だったのです。


――どう面白いと感じたのでしょうか。

 社会に新しい評価軸を作り出すことができる可能性に面白みを感じました。
 仮想通貨は簡単に言うと送金の手段だと私は考えています (もちろん、国に支配されていない通貨だと捉える人もいます)。地球の反対側の人間のポケットに、私が今1000円入れようとしても、数千円の送金手数料がかかってしまいます。仮想通貨であれば、国境のない通貨ですので、国際送金手数料の10分の1程度の手数料で世界中にお金を送ることができます。このような、世界中の人が小額ずつでも送金しやすい仕組みによって、例えば教育環境が整っていないような国の子供が自分たちへの寄付を募った時、世界中の人が寄付に参加しやすい状況が生まれます。

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 また、仮想通貨では送金の履歴がブロックチェーン上に改竄されない記録として残ります。通常コンビニの募金箱にお金を入れても履歴は残りませんが、仮想通貨による寄付ではブロックチェーン上に残るので、他のデータ取得システムと紐づければ、例えばあなたがこの国の女の子に送金した1000円はその子の教科書代になり、その子はその教科書を使って勉強することができ、あなたはその女の子の将来に何%貢献しましたという記録が残ります。
 前職のブロックチェーン・仮想通貨の業界では、国際送金が容易で、送金の履歴が改ざんされない状態で残る仮想通貨を用いて、「人の社会貢献度」を数値化し、新しい社会評価軸としようという目標を持っていました。この仕組みによって価値がない、価値が測りにくいと思っていた行動が、世界中の人から認められることだってあるかもしれません。このような世界観にワクワクして、仮想通貨・ブロックチェーンの業界に入りました。



――今は日本の伝統産業の発展に技術を役立てるお仕事をされていますが、まったく別の業界に移られたのはなぜだったのでしょう。

 ブロックチェーンの業界にいたとき、ビットコインの保有金額は日本が世界一なので、資金調達したい海外のプロジェクトがたくさん日本の市場に来たがっていました。しかし日本のような独特の文化圏のところは海外の起業家にとってはコミュニケーションに負担がかかり、提携がスムーズに行かない例もありました。なおかつ日本人のネットワークは海外では弱いので、そういったガラパゴス的な市場は長期的に見てそんなに魅力的なものではないだろうと悟ったのです。
 日本の強み、海外に売れる強みは一体何だろうと思い悩むようになったときに出会ったのが日本の伝統産業だったのです。


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