起業家の視点
斎藤 俊男 氏
株式会社ティー・エス 会長
自分を好きになると人生は楽しくなる
――斎藤さんは日本に来られて何年になりますか
約30年になります。ブラジルでは体育の先生で柔道をしていました。
――日本を目指した理由は。
自分の親の遺伝子がどこから出て、どこからどういう風に私が来ているか知りたいと思ったのです。それとブラジルでカラオケや柔道や相撲をしていましたが、全て日本から生まれたものだったので、やっぱり本場を知りたいということもありました。
――礼に始まり礼に終わる柔道の経験は日本に来て役立ちましたか。
役に立ちましたね。普通のブラジルの人には先輩後輩の世界が分からず、「自分はあいつより仕事ができる」といって先輩を馬鹿にすることもあります。自分は先輩後輩の世界を教育されていたので、来日後に仕事で「はいわかりました」と言うことはできたと思います。
でも、特に今の日本の学校に先輩後輩の話を持ち込むのは絶対反対です。日本のいじめの元は先輩後輩の世界だと思っています。子供らは先輩の役割としてどこまでしていいかわからず、気づいたらいじめをしています。あなたはここまではしていい、これ以上はいじめになっているんだよという明確な線がないんですよ。
――社会でもハラスメントが問題になっています。
会社も同じですよね。先輩はいじめたいのでなく自分のやり方があって言っている場合もあります。しかし先輩後輩の関係が厳しいことが正しいかと言えばそれは疑問です。
――昔はそれで統制し仕事の効率を上げる機能を果たしてきたのかもしれません。
昔の日本はみんな苦労して色々大変な思いをしながらやって来たんですよ。今は何でも簡単に手に入るし人の苦労を考えません。苦労している人としていない人では生活や考え方が全く変わっていきます。私は大変な思いをして生活してきたので、もののありがたさはわかるのです。汗をかいて稼いだものは簡単に手放すものではありません。
――努力して得るものにこそ価値がありますね。
柔道ではみんな大変な思いをして練習して大会で勝つわけです。人生も同じです。人生の始まりは自分自身です。自分を信じる。自分はできる。自分は自信を持っている。自分は世界で一番いい男だという、そういう自分を立ち上げないと、まわりが自分のことを立てるわけがないですよ。
自分を好きになると人生は楽しくなるんです。自分のことを好きになれない人が例えば彼女を作ろうとしたって、彼女が自分のことを好きになれるわけがありません。自分自身が自分を嫌いなんですから。
日本人はだいたい、私が一番上手いとか一番いい男だとか言えないんですよね。誰かにいい男ですねといわれても「いやいやそうでもない」とすぐ言うんです。私は、斎藤さんいい男だねと言われると「ありがとう、私もそう思ってますよ」。そういうところでやっぱり人生が変わるんです。別に口に出さなくても心の中で思っていればいいんです。
何かしようと思ったときに砂をかけられるというのは普通ですよ。例えば私が農業やるよと言った時にみんなは「お前バカかい」と言ってね。「そんなに簡単だったら日本人誰でもやってるよ」と。でも10年経ったらちゃんと結果を出しました。
大事なことは一番になることです。大統領の名前はみんな知っていても副大統領の名前はあまり知らないでしょう。一番になると、商売するには自然とどこに行ってもアピールになるんですね。私があちこち呼ばれるのは、ネギ王で一番になっているからです。一年中ネギの生産ができるのは私だけです。普通はできないことをあちこち勉強に行って実現しました。
だから人生は「一人か、もう一人か」です。あなたが一人しかいない一人なのか、それとももう一人いるような一人なのか、それで決まるんです。
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