<向学新聞2020年7月1日号記事より>
「特定技能」導入から1年
コロナ禍の影響と業界からの要望
出入国在留管理庁が5月29日、「特定技能」の在留資格で就労する外国人が、2020年3月末時点で、3987人だったと発表した。政府の初年度の最大想定の1割に満たない人数となった。3年間の技能実習を修了すれば無試験で特定技能に移行できるが、技能実習からの移行組が全体の91・9%を占めた。
取得数が伸び悩んだ主な理由として、送り出し国との制度整備や試験実施および登録支援機関などの環境整備に時間がかかり、取得数はごく緩やかな増加でのスタートとなった。更には、今年前半のコロナ禍の影響を大きく受ける形となった。国内外での試験の実施が不可能となり、東京五輪延期によって、関連するインバウンド業界、宿泊や外食業界も大きな影響を受けている。
一方、農業や漁業・建設業では、入国制限により予定していた技能実習生が来日できないため、人手不足となっており、介護分野での人材不足も慢性的に続いている。
そんな中、経済同友会は6月10日に出した提言の中で、経済回復の下支えに重要な物流機能を維持していくために、現在直面する問題を解消するための物流改革が必要だとし、その中で、外国人ドライバーを「特定技能」の対象として認め、必要な教育項目を策定することの必要性を指摘している。
更に、自民党の外国人労働者等特別委員会でも、外国人労働者の受け入れに関する提言の中で、「特定技能」対象業種にコンビニエンスストアを追加するよう求める動きがあり、これは、政府が7月に策定する経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に盛り込むよう求める予定だ。
「特定技能」の導入から1年、今後の取得数等は、引き続きコロナ禍による入国制限や、対象となる業界の業績などの影響を大きく受けることが予想されるが、対象業種拡大の検討も含めて、制度の定着と円滑な運用が急がれる。
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