向学新聞2020年7月1日号記事より>

日本で働く留学生OBたち
ムハマドウ ジェングさん
株式会社サンパワーCEO

セネガル出身のムハマドウさんは、現在、ソーシャルビジネスとして中古タイヤの世界での循環を手掛ける株式会社サンパワーのCEOとして活躍している。仕事や会社の魅力、日本に来たキッカケ、アフリカビジネスなどにつき伺った。

社会と環境に仕事で貢献  アフリカの国民との関係を

ムハンマドウさん

川村社長(左)とムハンマドウさん(右)

Mouhamadou Dieng ムハマドウ ジェング
セネガル出身。留学当初から勉学とアルバイトで自立し、日本語学校と東京外語カレッジを経て、2015年サンパワー入社。現在は同社CEO。8カ国の顧客と貿易。フランス語・英語・日本語が堪能。

仕事の魅力
 会社としてはリサイクル事業をやっています。日本で使ったタイヤをゴミにしないように、①中古タイヤとして海外に送るか、②細かくして発電機の燃料にしています。私は現場で中古タイヤを現物検査して買い付け、それを海外に輸出しています。

 一口にタイヤと言っても、サイズとか、冬用か夏用かとか、規格もいろいろありますが、日本の中古タイヤは質が良いので、海外で充分に使えるのです。
 現在、アフリカ4ヶ国、ロシア、グルジア、モンゴルなどと取り引きしていて、様々な国の人と仕事ができることが魅力です。お客さんの考えや事情はそれぞれ違いますが、下調べをして、希望を汲み取りながら仕事を進めていくので、コミュニケーション力が高くなります。 
 アフリカではリサイクルが不充分なので、使わなくなったものは、ゴミとして捨てたり燃やしたりしていますが、環境に影響が出ています。リサイクルはソーシャルビジネスでもあり、特に発展途上国の現地で利益を出せるようにできれば広がりますし、利益が出れば相手も助かります。サンパワーはその1つのモデルを進めています。
 川村社長のような人は少ないですが、海外で、欧州で仕事をしていました。海外のことが分かります。いろいろな目で見ることができ、チャレンジが好きです。会社は過ごしやすくて、遣り甲斐があります。こういう人が日本に増えれば社会が変わると感じています。

 セネガルでは、燃費も良くて長持ちして丈夫なディーゼル車とか、中古自転車とか、古着とか、皿やフライパンなどの雑貨も、日本の製品は人気があります。
新品を買うなら、中国の新品タイヤを買いますが、中古タイヤなら日本のものを買います。
 アメリカでも、日本の中古タイヤが欲しいといったニーズはありますが、アメリカの車は大型で、タイヤのサイズが合わないので、ビジネスにはなりにくいです。

ムハンマドウさん

セネガルの工場長(左)と
山形のラーメン屋店長(中)と

来日のキッカケ
 アフリカ人は、アジア人を見たら中国人だと感じますし、ビジネスをやるなら、まず中国を考えます。なぜかというと、中国には、アフリカ人が入りやすい、ビザが取りやすいからです。それに対して、日本は、アフリカ人が来るには入国のハードルが高いです。
 高校時代に海外留学プログラムのスコアをクリアしていて、私以外の生徒はアメリカやフランスに留学しましたが、私だけが日本を選びました。

 
どうしてかと言うと、アフリカ人はかなりアメリカやヨーロッパに行っていますので、欧米の生活はアフリカでの生活とだいたい同じだから分かると思ったのです。アジアの方が、より新しいことを勉強できると思いましたし、アフリカ人が知らない社会や技術を学べると思ったのです。それで、技術やモノづくりを学ぶために、日本に留学しました。家族が物心ともに応援してくれました。
 私の場合は、日本で会社経営をしているセネガル人がいて、アフリカの学生を増やすために現地で説明会をやっていたのですが、その窓口が高校にありました。そのエージェントが日本語学校を紹介してくれました。ですので、日本に来た時は、エージェントのセネガル人以外に、知り合いはいませんでした。
 
 最初の1ヶ月を日本語学校の寮で過ごした後、新たに住むところを探しました。当時、日本語の会話力はゼロだったのですが、住むところを探すために、無理やり日本語を話し、そのお陰でやがて日本語が話せるようになりました。
 最初は日本語を身に付けることだけをやり、半年してからアルバイトをスタートしました。それでヤマトで働きました。仕分け作業は日本人や中国人がやっていて、漢字系でない国の人が流れ仕事や運ぶ仕事をやるのですが、それを夜勤で1年やりました。寝る時間も無かったですが、経済的には助かりました。昼間は日本語の勉強をやり、その時ちょっと寝たりもしましたが、アルバイト2ヶ月目からは、自分で学費を払えるようになりました。アルバイトを3つ掛け持ちした時もあります。海外留学する人は親から援助される人が多いですが、自分は自立してやってきたので、メンタルとしては誇りを持てました。

 日本は人手不足で働く人が少ないのでチャンスがあると感じます。デメリットは忙しすぎて、技術の勉強できないことでした。寝る時間も、学ぶ時間も少ないので、技術よりもビジネスの方が良いと、ビジネスの方が学びやすいと感じ、将来の夢も変わっていきました。
 ビジネスは、遣り方が、どちらが正しいかとかなく、状況で遣ることが変わるので、いろいろ考えることができます。
 
 日本語学校は1年3ヶ月間で、2年間は専門学校、その専門学校は自分で探しました。バイト先にも近かった東京外語カレッジです。日本人と外国人のミックスクラスで、英語を話したい日本人がいました、外人との交流を経験したい日本人がいました。そこで日本人とも交流するようになりました。日本人は礼儀ただしいけれど、静かすぎるとか、ビジネスは議論が多いですが、日本人はそれが苦手で、あまり話さないとか感じました。一方、法律的なことは日本人はとても得意でした。交流が多く、専門学校はとても楽しかったです。お花見、年2回の学校のイベントで、アフリカ人は自分だけだったですが、国のブースを出して料理を出したりしました。先にたくさん働いて学費のことは落ち着いていたので、勉強や交流がたくさんできました。今でも連絡を取ったり会ったりしている友達がたくさんいます。
 
 2015年に専門学校を卒業して、半年して同じ2015年に結婚しました。セネガルの人です。日本で出会いました。同じ留学生でした。
 日本でのセネガル人のコミュニティは年3回の集まりがあって、みんな知り合いでした。日本にいるセネガル人は、以前は少なかったのですが、3年前から増えてきています。日本留学のエージェントが増えています。それで学生を呼んでいます。派遣会社みたいな感じで、学校と学生の両方からコミッションを取っています。結果として、日本に来るチャンスは増えています。

母国の良さ
 セネガルはストレスの無い国で、みんなマイペースで自由に過ごしています。ストレスという単語が無いのです。日本に来て、初めてストレスという意味が分かりました。1年中ずっと夏ですし、海がきれいです。食べ物が美味しいし、安全です。
 日本を経験してきて、セネガル人とずっと一緒にいると、私は厳しい人のように思われるようになりました。一方、日本人からは、マイペースに見られます。バランスとして、ちょうど良いです。帰国すると毎日さわぎます。地域全体が家族みたいな感じで、みんな知り合いです。1人になることは無いです。

就職活動
 外国人には、日本での就職のチャンスがあるけれど、そのチャンスに近づけるためにリサーチしないといけないですね。どういうことしたいをしたいのか、自分に向いていることは何か、自分の国とつながりやすいことは何かと。貿易なら自分の地域や言語とリンクすることができます。
 卒業の2週間前にハローワークに行きました。それまであまり就職活動はしていなくて、冷静に考えていたのですが、学校の先生から心配されたりしました。
私の場合は、まず自分が興味のある会社のみ選びました。キーワードは「アフリカとリンクすること」で、そういった会社のリストは多くありました。次に「中古タイヤ」をキーワードにしました。なぜかというと、自動車なら、日本とハンドルが右と左で違うので売りにくいですし、新車は高いので、外しました。家電なら、日本は米国式でヨーロッパと電圧の規格が異なるなど、合わないので外しました。
 ヨーロッパとか日本とかの規格を考えると、タイヤなら規格に制限されにくいし、仕事の範囲が広いと考えたのです。その条件に当てはまったのは3社だけでした。
そこで、その3社に連絡し、履歴書を送りました。そしてサンパワーの面接を受け採用になりました。ですので、他の2社は断ることになりました。

後輩の留学生へ
自分に厳しくすることが大切です。なぜなら、母国の生活と違うので、厳しくして日本の社会に入る、文化に入ることが大切です。自分に甘くしないことです。
文化のことが日本では大変です。今、住んでいるのは日本なので、郷に入れば郷に従えで、100%は分からなくても、7~8割は分かることが必要です。
日本の会社で働いているのだし、日本の社長の下でやっているのだし、日本で給料を出してもらっているのだから、それを重んじることが大切です。

アフリカと日本
 日本政府はTICADのパイプに力を入れていますが、それが終わったらゼロになってしまいます。アフリカ人は日本に入りにくく、日本のアフリカへのアプローチは政府と政府になっていて広がりが無いです。一方、中国にアフリカ人は入りやすいです。中国は政府と政府、そしてB to Cで、直接の関係を作るようにしています、一般の人とのビジネスを強くしています。日本にはアフリカ人が入りにくいので、その時点でビジネスにならないのです。会社をやっている人が政府の人ではないので、日本には行きにくいです。そのため、ビジネスをやるなら中国に行こうかとなっています。今のように国民との接点が無いままですと、日本とのビジネスチャンスはどんどん減っていくと感じます。
 韓国はアフリカで自動車が強い、起亜自動車が強いです。韓国にもアフリカ人は入りやすい、ビジネスしやすいです。トヨタや三菱自動車以外は韓国に負けています。タイヤも中国に負けています。
 ヨーロッパ企業はアフリカにモノを売りたいけれど、アフリカ人がヨーロッパに入るビザは厳しくしています。
 ヨーロッパは、世界の市場で売って余ったものをアフリカに売っています、マーケティング的にアフリカのことは考えず値段は高めにして売っています。
一方、中国は天然資源のことをやりたいと、アフリカの人が必要なものを中国は分かっています。そういったやり方は日本も学ばないと。世界は村になっています、お金を稼いだとしても、人を入れない国は成功しません。パイプを作るために国民をターゲットにした方が良いと思います。
 JICAとかJETROとか協力隊とかあり、ビジネスのためだけど、ボランティアでないビジネスを作りたいだろうけれど、国民を直接のターゲットにして、アフリカで動けるように変えていった方が良いと感じます。
アフリカや他の国でもお金に関わる様々なことがあります。日本はプレミアムな感じで、世界のスタンダードとは違っていて、お坊さんみたいな感じです。でも、自分も日本と同じやり方でセネガルでやろうとして、結果としてうまくいきませんでした。

 自動車はインテリアで高くなります、エンジンとかは、あまり高くないです、エンジンと脚だけ作れば足ります、仕事で使う自動車なのでそれが大事なのです。
売れているのは昔のパジェロとか、セネガル首都のダカールラリーで何回も優勝しています、アフリカで知名度があるし、信用されています。
 今、アフリカは変わっています。大企業もアフリカに行っています。でも日本人には昔のアフリカのイメージのまま変わっていません。世界に留学してアフリカに戻る人も出てきています。
 日本は国土を開発しつくして、国内では重機はあまり買わないですが、アフリカに行けばチャンスがあります、毎日、道路とビルを作っています。日本のメンテナスを教えてあげれば、レンタルでも成り立ちます。部品も売れます。アフリカへのイメージを変えないといけないです。


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