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日本語のプロと考える ビジネス日本語 

第4回 日本企業で働くときの法律

 今まで、日本の会社に入ったあとのビジネス日本語コミュニケーションについて書いてきましたが、今年度の最初は、日本で仕事をするときに知っておいてほしい法律について説明します。日本で仕事をするみなさんは、お金をもらったり、休んだりすることができます。またみなさんは、税金や保険料を払ったりしなければなりません。今日はこういうことに関係がある法律について、みなさんと一緒に考えていきます。

もっと残業したいのに・・・

 Aさんは去年、小さい会社に就職しました。国の家族にお金を送るため、たくさん残業することを楽しみにしていましたが、入社して半年がすぎて、会社の仕事に慣れたあとも、残業がほとんどありません。このままだと将来の予定が変わってしまうので、Aさんは日本人社員に、どうして残業がないのか聞きました。すると、この時はじめて「法定労働時間」について説明され、1日8時間、1週間に40時間までしか仕事ができないと言われました。他の会社で仕事をしている友だちは毎月30時間くらい残業をしていると聞いています。Aさんはこの会社がうそをついていると思いました。ですからAさんはだんだん、この会社でがんばる気持ちがなくなりました。

内定ブリッジ淺海一郎氏
淺海 一郎
内定ブリッジ株式会社代表取締役、ビジネス日本語教師、厚労省「雇用管理に役立つ多言語用語集及び翻訳データの作成・普及事業」有識者研究会委員、JETRO高度外国人材スペシャリスト



仕事をする時間のルール
 まず、この日本人社員はうそを言っていません。「法定労働時間」については、労働基準法という法律の第32条に書いてあります。どの会社にも関係があるルールです。では、Aさんの友だちは、どうして残業を毎月30時間しているのでしょうか。
 それは、友だちの会社の中に「三六協定」という約束があるからです。これは、労働基準法という法律の第36条に書いてあります。この約束がある会社のスタッフは、1ヶ月に45時間まで残業をすることができます。

どうして休めないの?
 新入社員のBさんは、1年で10日の有給休暇をもらいました。有給休暇とは、給料をもらって会社を休める日です。別の会社で仕事をしている友だちは、自分が休みたいときに休んでいると聞きました。Bさんも国に帰りたいので、3月に1週間の休みをもらいたいと会社に言いましたが、3月は会社が一番忙しいときなのでダメだと言われました。Bさんは、有給休暇のシステムについて何も知らないのと、同じ会社に仲がいい人もいないため、有給休暇を使って国に帰るのがダメなんだと考えました。

有給休暇の使い方
 有給休暇の使い方には、いくつかのルールがあります。その中の一つは、会社がとても忙しいとき、社員は有給休暇を使えないというルールです。労働基準法という法律の第39条に書いてあります。また、休む理由は何でも大丈夫です。病気だから休むのも、旅行したいから休むのも、国に帰りたいから休むのも、全部大丈夫です。

会社のルール

会社からもらう「就業規則」をよく読もう 
 労働基準法は、日本で仕事をするみなさんにとって、とても大切な法律です。これは、全部の会社が守らなければなりません。しかし、この法律は難しい日本語で書いてありますし、それぞれの会社には、この法律で決まっていない特別なルールもあります。ですから、ほとんどの会社は、自分の会社のルールを「就業規則」という本に全部書いて、それを社員に渡しています。しかし残念なことに、この「就業規則」はだいたいどの会社でも、やはり難しい日本語で書いてあることが多いです。
 そこで、国(厚生労働省)は先月、この本をわかりやすい日本語(やさしい日本語)で説明した本をはじめて作りました。この本には、たとえば、今説明した「法定労働時間」や「残業」、「有給休暇」のシステムなど、日本で仕事をするときに知っておくといいことが、たくさん書いてあります。また、わかりやすい日本語(やさしい日本語)で説明するだけでなく、難しい言葉のリストを作って、英語など、他のたくさんの言語で翻訳しています。日本で仕事をするみなさんのために作りましたから、内定をとって会社に入る前や、会社に入ったあとで、ぜひ自分で読んでみてください。

読んで頂いてありがとうございました 
 仕事をしていると、大変なこと、難しいことは必ずあると思います。それは、どの国でも同じです。しかし日本には、皆さんを待っている会社が、たくさんあります。優秀なみなさんが、日本の会社で活躍してくれることを、ぼくたちは信じています。1年間、読んで頂いて、ありがとうございました。



第1回 コロナ時代の就職活動
第2回 日本企業のオフィスコミュニケーション
第3回 日本企業のオフィスコミュニケーション②~仕事の進め方~

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