向学新聞2021年10月号目次>留学生の入国緩和を願う声
<向学新聞2021年10月記事より>
留学生の入国緩和を願う声
オンラインイベントに参加する日本留学を希望する学生達
・日本で学びたい留学生たちは、将来日本社会の一員または良きパートナーとなりうる。旅行者などとは質的に異なる。 ・海外の水際対策に倣って、日本でも厳格なコロナ対策をしながら、留学生受け入れができるはず。 ・受け入れ再開について、どのような計画なのか、ロードマップを示してほしい。決まりがあれば遵守する。何の情報発信もなければ、それが日本の外国人留学生に対する姿勢だと捉えられてしまう。 ・10月以降は日本への留学をキャンセルする人が激増することが予想される。 |
留学の扉を開く会の主な要望や懸念事項
待機留学生の声
「コロナ禍の日本留学の扉を開く会」は、日本語教育機関関係者等で作られた会で、入国制限で日本に留学できず待機している留学生たちが、日本へ留学できるよう、情報発信し行政機関やメディアなどに働きかけている。約900名の留学生のインタビューを丁寧に集め、2回実施したオンラインイベントには、ライブで延べ約8500名が参加し、イベントの動画は約2万回視聴された。海外から参加した日本への留学希望者は30カ国・地域以上に上る。同会の代表を務めるデイヴィッド・ロッシ氏は、向学新聞の取材に対し「1年半待った学生達の中では、留学先を韓国等に変更する動きもあり、特に知識レベルが高く、経済的にも余裕がある学生たちだ。あとから受け入れを再開しても、質の低い留学生しか来ない可能性がある。今日だけでも、5名から日本への留学をキャンセルし、他国への留学や母国で勉強や就職する方向に変更すると連絡がきた。」と話す。
また、日本留学フェアの情報を見た学生の反応は、「日本が外国人を欲しがっていないのに、なぜ私が日本留学フェアに参加するのか?」、「日本に入国できないのに、なぜ日本語を勉強しなければならないのか?」との不満の声が上がったという。「このまま日本留学の扉が開かれなければ、日本への留学生の数が激減するだけでなく、日本や日本語への関心も失われてしまうだろう。感染対策で、より厳しい明確なルールを設置し、その条件を満たし決まりを遵守できるなら、ビジネスであれ留学であれ、入国を認めてほしい」と話す。
業界からの要望
公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会は、8月4日、出入国在留管理庁にむけて、「介護福祉士を目指す外国人留学生の入国制限の緩和について」要望書を提出した。在留資格「介護」の創設(2017年9月)等により、養成校へ入学する外国人留学生は急増し、令和2年度では入学者数の34・0%にまで上った。国内で必要とされる介護職員の数は今後さらに増加することが予想される中、外国人留学生が入国できない状況が続けば、日本社会に与える影響は計り知れないとし、早期の入国制限緩和を求めた。
また、日本語教育機関関係6団体は、留学生の入国制限早期緩和を目指して、これまでも関係省庁や国会議員などに対策を求めてきたが、新たに、内閣総理大臣宛に「留学生の入国制限早期緩和についての嘆願書」を提出する方針だ。
省庁担当者
文科省の担当者は、向学新聞の取材に対し「省庁間での検討が必要。段階的に進めていくことになる。留学生本人だけでなく、受け入れる学校がきちんと対策・対応できるかも含めて見る必要がある。コロナ対策をしながら、留学生の受け入れ再開を検討したい」と話す。
入管庁の担当者は、最新の『新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処⽅針(9月9日変更)』の中に、国内外でワクチン接種が進む中で「ワクチンの有効性等も踏まえ、⾏動管理や検査も組み合わせた⼊国者への管理措置等を講ずるなど⽔際措置の段階的な⾒直しに取り組む。」という文言が新たに盛り込まれたことに触れ、「いつまでに、どのような基準を満たせば(留学生受け入れを進められる)ということを現段階では示せないが、省庁間と政府全体で検討し、段階的に進めていきたい」と話す。
また、今年5月から、国費留学生については新規入国が再開されていることについては、入国が許可される「特段の事情④入国目的に公益性が認められる者(個別事案ごとに関係省庁協議を経た上で公益性を判断)」に該当するものであると話す。
総合的対応策の下、外国人受け入れについて様々な環境整備の議論が進む中、留学生の新規入国にどのように対応するか、政府の判断が注目される。
<参考>
コロナ禍の日本留学の扉を開く会
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