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向学新聞2023年7月号記事より>

「やっとできた」30年来の悲願 
日本語教育機関認定法成立

2023年5月26日、日本語教育機関の教育内容などを国が審査・認定する制度を定めた「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律(日本語教育機関認定法)」が国会で可決・成立した。日本語教育関係者が心待ちにしていた法整備が進み、2024年4月の施行に向けて、急ピッチで準備が進む。

昨今の日本語教育の課題として、日本語学習者の増加とニーズの多様化、地域での日本語教育では高齢化に伴うボランティア不足や、財政面での課題があった。これまで日本語教育機関の適格性は、「在留管理」の観点から、法務省が基準にのっとり判断し認定していた。しかし、それでは教育の質の担保が不十分で一定しない、日本語教師の法的位置づけが不明確、日本語教師の専門性の証明が難しい、などの課題もあった。新法では、文部科学省が日本語教育機関を認定する形となる。

新法概要

 
新法の概要
①日本語教育機関の認定
日本語教育機関が教育環境を整備し、教育課程を適正に実施できる機関であることを保証するため、文部科学大臣が認定をする。認定を受けなければ、在留資格「留学」による生徒の受入れができなくなる。認定後も、継続的な質の保証・改善のため、定期報告が求められ、実地調査も実施される。また「登録日本語教員」の配置も必須となる。

②登録日本語教員
国が指定機関を通じて行う試験に合格し、実践的な教育実習を修了すると、国家資格を有する人材として、国に登録される。キャリア形成に資する仕組みや、研修などの環境整備も進められる。現職の日本語教師には、5年の経過措置が設けられる。
 
現場の声
一般社団法人日本語学校ネットワーク代表理事の大日向和知夫氏は、「日本語学校の現場の先生方から多く聞かれるのは、試験などをクリアし今後も日本語教師を続けられるかどうかという心配の声。現役の先生方は、50代60代のベテランも多く、これまで、必ずしも良い処遇でなかったなか、この仕事の楽しさや意義・重要性を実感して続けてこられ、語学留学生の日本語教育を支えてきてくれた功労者。新たに試験に合格する必要があるとなると、ハードルに感じてこの機会に引退を考えてしまう可能性もある」。 

た日本語学校の経営側としては、コロナで離職した先生達が戻ってきていない学校も多く、入国待ちだった2年分の留学生が一気に入ってきたので、教師の数が足りていない。そのような状況なので、現役の先生方が続けられるよう、手厚めの対策が必要」と話す。また、新たな日本語教育の担い手確保・育成のためには、「新たに日本語教師を目指す人たちにとっても、処遇等の環境を整えてアピールする必要がある」。処遇改善を後押しする具体的な施策の実行が願われる。また、大日向氏は今回の新法成立について「やっとできたか、という想い。まだ一歩ではあるが、法律ができたことは具体的に前進するきっかけになる。日本語教師の地位の向上も含めて、今後の日本語教育の未来が明るくなってほしい。現場でも努力を続ける」と話す。

課題は山積み
カイ日本語スクール代表の山本弘子氏は、新法成立について「法的根拠が明確になり、日本語教師の地位向上につながるため、国家資格はインパクトがある。30年来の悲願だった」と話す。しかし、まだまだ課題は広範囲に深くあるという。「日本は『語学留学』についての知見が少ない。その学生のレベルに合わせた内容・期間で学ぶ日本語学校は、学校法人をモデルとする考え方では合わない面がある。語学留学について、海外の良い先進事例などを参考に取り入れて日本式の形に組み立てる必要があるが、日本は国内事情を中心に見て、そこから発想するケースが多いため、今後の制度設計や運用について、語学留学に適したものができていくか、不安に思うところもある」と話す。

「海外からの留学生受入れも、諸外国が熱心に行っているように、日本留学の魅力を適した人材層にPRするための人員を配置することや、家族として来日した配偶者や子供たちへの語学面のサポートも、サポートする人材の処遇も含めた体制整備を急ぐ必要がある。また、同じ『日本語を学ぶ留学生』を対象とする学校でも、学校法人とそれ以外の設置形態の学校とでは、教材の著作物利用の制限や学割などの扱いに違いが生じている。このような日本側の事情が留学生に不利益をもたらす点も是正してほしい」と話す。

特定技能2号の受入れ分野拡大など、外国人材が家族で日本に長く定住してもらうことを目指す以上、家族として滞在する配偶者や子供たちへの日本語教育の環境整備も、喫緊の課題だ。

日本留学の重要な入り口となる日本語教育機関は、コロナ禍による入国制限で、留学生が来日できないという過去最大の危機に直面した。その峠をようやく越え、日本語教育についての法整備が進展し、あらたな段階に進む。



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