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向学新聞2023年7月号目次>【アフターコロナ】留学生への語学サポート、キャリア支援 立命館アジア太平洋大学

向学新聞2023年7月号記事より>

【アフターコロナ】留学生への語学サポート、キャリア支援
 立命館アジア太平洋大学

去る2022年3月、長かった入国制限が緩和され、留学生の新規入国が再開した。母国でオンライン授業を受けて来日した留学生達には、コロナ前とどのような違いが見られるのか。大学の取り組みも含めて、立命館アジア太平洋大学(以下、APU)の言語教育センター日本語主任の寺嶋弘道氏にお話を伺った。

寺嶋弘道 准教授

寺嶋弘道 准教授
立命館アジア太平洋大学
言語教育センター 日本語主任 

―貴校の2023年5月1日時点の在籍学生数では、国際学生(外国人留学生)が2777名(全体の46・4%)、出身国・地域が106カ国・地域になったと伺いました。

はい、「国際学生の出身100カ国・地域」を目指して多方面で努力し、昨年度初めて100カ国・地域を超えました。開学以来受け入れてきた学生の出身国・地域の累計は、166カ国・地域に達しました。

在学生の出身国・地域の特徴としては、最も多いのが韓国。次いでインドネシアで、現在は中国を抜いて2位になりました。ミャンマーも、現地の国内情勢の影響もあり、受け入れ人数が急増しています。


―留学生たちの様子はいかがですか。

本学では従来、国際学生と国内学生が約半々という多様な環境を活かして、学生が自ら色々なことにチャレンジして、どんどん人とのつながりを広げていくという傾向があります。一方、やりたいことがたくさんある中で、一部の国際学生が日本語学習に集中しきれていないかなと思ったこともありました。

コロナ禍を経て2022年に国際学生の新規入国が再開され、対面授業も再開されましたが、今は以前よりも、やりたいことを一つ一つ慎重に選んで行動し、落ち着いて日本語を学ぶ学生が多いと感じます。

殆どの国際学生は海外の高校を卒業してすぐAPUに入学しているため、入国制限期間中は、多くの学生が母国からオンラインで授業を受けていました。その影響として、学んだ日本語を使う機会が圧倒的に少なかったため、日本語でのコミュニケーションに自信を持てない学生が多くなったという印象がありました。

国際学生たち

国際学生たち
提供:立命館アジア太平洋大学

もう一つがモチベーションの部分で、先が見えない不安感も学習意欲に影響していたと思います。当時は、この先いつ日本に入国できるのかが分からず、一生懸命日本語を学んだ末に何ができるのかが不透明でした。

人とのつながり

本学の大きな特徴のひとつとして、人と人とのつながりが強いという面があります。先輩と後輩とのつながりの中で、先輩の成功体験や失敗体験を聞いて後輩が学び、また次の後輩にも受け継がれていく良い文化があります。しかし、今回のコロナ禍によって、今の3年生・4年生は入学時から先輩とのつながりを作る機会が限られ、そうした機能が弱まってしまった可能性があります。
そのような状況があったため、先ほど申し上げたように、やる事を自分で慎重に選んで活動に参加する傾向が強くなったのかもしれません。

日本語学習やキャリア支援

コロナ禍が落ち着いてきた頃、キャリアオフィスから「国際学生がなかなかキャリアオフィスを訪問しない。オフィスが開催するセッションに参加する学生が少ない」との相談を受けました。その原因としては、コロナの影響でまだ先行きが見えない、先輩からの口コミ情報が少ない、コミュニケーションに自信がない等、いろいろあったかもしれません。

そこで、私は学生を待っているだけではなく、こちらからアプローチする策を提案しました。カフェテリアにブースを出して先輩と話す機会を設けたり、キャリアオフィスの活動紹介のセッションを行ったりという工夫で、多くの学生がキャリアオフィスにつながったようです。 

本学では、日本語学習をサポートする場として、「SALC(言語自習学習センター)」を設置し、Peer Advisor(以下、PA)によるサポートを行っていますが、2022年秋の利用人数は、164名となりました。利用目的は様々ですが、最も多いのはPAとの会話練習で、コミュニケーションに自信がない学生に対しては、大切なサポートとなっています。
 
また先ほど述べたように、先輩からの生の情報を受け継ぐ機能が弱まっている可能性があるため、キャリアについて考えるセッションを、日本語プログラムの中でも強化しなくてはと感じています。その取り組みの一つとして、以前から、学長室と共同で「GOAL講義」という、卒業生を登壇者に招く授業を行っています。社会で活躍する卒業生から、今の仕事の面白さや、学生時代に何をやっていたかなどを聞くことが、学生たちの大きな刺激になっています。

他にも、キャリアオフィスのスタッフを招いたセッションも中級必修授業の中で行ってきましたが、現在はこれらの取り組みの持つ意義が、より大きくなっていると感じます。学生たちが想い描く将来に行きつけるように、必要なしくみ作りをして、サポートを更に充実させていけたらと思います。

留学生へのメッセージ

コロナ禍にオンラインで授業を受けてきた皆さんの中には、日本語でのコミュニケーションに自信が持てないという方もいるでしょう。まずは、日本語で間違えることや流暢に話せないことを恐れず、いろいろな人との国際交流を楽しんでください。そうすれば、自然と日本語力が向上し、人間関係も広がっていくはずです。また、自分が利用できるサポートがあるなら、ぜひ積極的に活用し、自分の成長につなげてください。

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