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棚橋 サンドラ 氏 
(文京学院大学 外国語学部准教授) 


英語の授業は成績評価が問題  大学スケジュールを改善すべき

――留学生受入れの課題は何でしょうか。
 まず住宅問題があります。留学生は日本の住宅事情に詳しくないので、寮を準備してあげることが重要です。日本人学生とも一緒に入寮できるようにし、生活の中で日本文化を感じ学んでほしいと思います。異なる文化背景をもつ学生が共に暮らすことは、外国人留学生だけでなく日本人学生にとっても有益だと思います。
 次にスタッフの不足です。本学では、留学プログラムの担当者は5人ですが、留学プログラムの参加者は毎年増え続けており、業務負担が大きくなっています。ホームシックになってしまう留学生もおり、留学生の増加に伴い心身をケアできる人材の必要性が高まっています。しかし近年、不景気に伴う財政問題が焦点となってスタッフの増員は難しい状況です。

――英語による授業が増えてきていますが問題はありますか。
 本学も留学生を多く受け入れるため英語での授業を増やそうと検討していますが、日本人学生を始め、英語を母語としない学生にとって不利になる場合があります。具体的には、日本人学生と留学生が一緒に学ぶ授業でどのように成績を評価したらいいかという問題です。現在、交換留学生としてやってきたアメリカ人、マレーシア人、ネパール人など、多国籍な学生が参加する授業を担当しています。日本文化に関して英語で授業を行っていますが、TOEIC600点以上を取得した日本人学生も参加できます。授業内でのディスカッションや参考文献を読む課題では、当然アメリカ人学生は議論もよくでき、毎週何百ページと文献を読むことができます。しかし、日本人学生はTOEIC600点以上でも、アメリカ人学生と同じようにはいきませんし、アジア出身の学生も英語が十分でない場合があります。授業の理解度が違うため、どのように成績評価基準を定めるべきか試行錯誤しています。

――グローバル化のため日本の大学はどう変わっていくべきでしょうか。
セメスター制などの大学スケジュールを改善すべきだと思います。東京大学が秋入学を検討していますが、それだけでは不十分です。日本の大学は1学期15週間のセメスター制ですが、アメリカでは1学期10週間で、夏季授業も含めて1年を4学期に分けるクオーター制を導入している大学がいくつもあります。クオーター制はセメスター制よりも取得単位数が多く、学生は短期集中で勉強します。
 また、日本の大学は春休みが長く、2~3月にかけて空白の2カ月間があります。アメリカの長期休暇は夏休みだけで、それ以外の冬季・春季休暇は基本的に約2週間です。例えば日本へ1年間の交換留学をした場合、大学はその貴重な2カ月間留学生に何もしてあげることができません。日本の大学と海外の大学のスケジュールが上手く噛み合っていないため、留学生へのサポートが難しい状況です。留学生が日本の魅力を学ぶことができるよう大学が変わっていかなければならないと思います。


Sandra F. Tanahashi
 カリフォルニア大学バークレー校で東アジア研究専攻、サンフランシスコ州立大学経営管理学大学院卒。法政大学、早稲田大学、明治大学、東京大学で20年以上教員経験をもつ。2007年から文京学院大学にて勤務。

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