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サーラ スヴェン氏 
(上智大学 国際教養学部准教授) 


半世紀前から英語で授業  多様なオプションで受け入れを

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――日本では留学生受け入れ拡大のため英語コースの設立が増加していますが、上智大学の状況はいかかでしょうか。
 前年度までの文部科学省事業・グローバル30採択校をはじめとする大学が英語化を進めてきましたが、本学の国際教養部では半世紀前から全て英語で授業を行なってきました。日本国内でしっかりと英語で勉強したい人のための学部で、現在注目を集めている国際教養大学や早稲田大学国際教養学部の先駆けだと言えるでしょう。
 本学は海外約170大学と交換留学協定を結び、毎年200名以上の留学生を1学期~1年間受け入れており、国際教養学部はその多くの受け皿になっています。中国・韓国からの留学生は日本語の習得が比較的容易ですが、欧米等の漢字圏以外の留学生にとって日本語が高いハードルになっています。そのため多様な留学生を受け入れるにあたって国際教養学部は重要な役割を果たしています。全ての大学が英語コースを作るべきだというわけではなく、留学生受け入れのために大学は多様なオプションを準備すべきだと思います。

――ご出身であるドイツは大学の英語化についてどのように考えているのでしょうか。
 よく「白黒」のような答えが求められていますが、簡単には答えられません。各国の文化・言語を大事にすることは重要だと思いますが、日本とドイツは経済大国という立場を守りたいなら、グローバル化に対応しないといけません。そのため、留学生を受け入れたり、ドイツ人を英語で教育する必要もあります。ですから、英語のプログラムも積極的に進める必要があると思います。言語の問題は日本と同様の葛藤を抱えていますが、日本よりも英語の導入が大きな議論となっています。グローバル化の波にどう対応していくか、両国の反応や考え方に相違点があるようです。

――ドイツはどのような魅力を留学生にアピールしているのでしょうか。
 ドイツは敗戦国であり、ドイツに対するイメージを改善するために国家的に文化外交や科学外交等に努めてきました。ドイツは米国、英国、豪州等に次ぐ人気の留学地域で、自動車や機械などの技術力が留学生を惹きつけています。また、ODA的観点でアフリカや中近東から留学生を受け入れ訓練を行なっていますし、トルコやパレスチナなどからの移民も増加しています。
 ドイツ学生の海外留学先としては、距離的・資金的な理由から欧州留学が最も活発です。ベースとなっているのが欧州統合の理念で、欧州諸国が協力して欧州域内留学を奨励しています。
 ただ、日独間で見ると二カ国とも技術大国ではありますが、例えば両国の理系学生は日独よりも米国に留学するケースが多い状況です。ドイツに留学する日本人学生はもっぱらドイツ文化、特に音楽に興味を持っており、日本留学するドイツ人学生は日本文化を目的とする傾向が強いです。今後は、日独で学部間の交換留学協定数の増加や、近年本学が力を入れて数を増やしているサマープログラム等を有効活用することで、両国の多様な学生交流を発展させていくべきでしょう。


Sven Saaler
 ドイツ出身。東京大学での5年間の勤務を経て現職。1999年ボン大学文学部日本研究科博士号取得。金沢大学に4年間留学。


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