日本料理の代表格
江戸の屋台のファーストフード
天麩羅は日本料理の代表格であり、専門店で味わう高級料理や一般の家庭料理として広く食されている。作り方はシンプルで、魚介類や野菜等に、小麦粉と卵を溶き合わせた衣をつけて、油で揚げる。出来立ての天麩羅には衣にパリッとした張りがあり、天つゆの旨みとともに口の中でシャリシャリと溶けいく食感は独特のものだ。
「てんぷら」の語源はポルトガル語で「調理・調味料」の意であるtemperoからきた等、諸説ある。江戸時代に庶民の間に広まったが、当時は火災防止のために天麩羅屋の屋内営業が禁止されていたため、屋台で食べる外食メニューの一つとして定着した。職人が仕事の合間に腹を満たすファーストフードのような位置づけにあり、江戸前の新鮮な魚を揚げて串に刺して出していたという。安価であったため屋台は大人気となり、そば、寿司とともに「江戸の三味」の一つに数えられた。
派生メニューとしては天丼や天麩羅そばなどがおなじみだが、変わり種としては中身が溶けないことで話題となった「アイスクリームの天麩羅」、福島県会津地方で100年以上の歴史を持つ「饅頭の天麩羅」などがある。ただし何でも天麩羅にしてしまえばよいわけではなく、揚げた衣と食材との相性が問題となる。シソはそのままでは渋みを含んだ一枚の葉にすぎないが、天麩羅にすることで別物の料理に化ける。ありふれた食材も「衣をまとう」だけでまさに変身してしまう、その奥深さもまた天麩羅の魅力である。
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