三浦 美樹氏 
(一橋大学 キャリア支援室特任講師) 


「Why」「How」「So What」を明確に


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 就職活動の最後の関門「面接」。相手の話を理解し、上手く自分の考えを伝えるコミュニケーション力が欠かせない。今回は、一橋大学の三浦美樹氏にお話を伺った。


日本の面接


――就職活動における面接の位置づけとは。
 
 面接は、応募者選考にあたって企業が最も比重を置く段階です。欧米のスペシャリスト採用とは異なり、日本企業は総合職として採用するので、専門性ではなく「ポテンシャル」を評価します。「ポテンシャル」とは、主に「能力」と「意欲」と「社風と合うか」の3つを合わせたものと言ってもよいでしょう。「ポテンシャル」はエントリーシートでも評価しますが、直接会って話をしないと評価しにくいものなので、面接が最も重要な選考方法なのです。
 例えば、「能力」のなかで特に重視するコミュニケーション力は、面接官との対話を通じて評価します。また、「意欲」は熱意を込めて話しているかどうかで判断し、「社風と合うか」は面接のなかで感じられる応募者の価値観や人柄から判断します。


――面接を受けるときの基本は何でしょうか。

 面接は2Wayコミュニケーションだということです。学生の皆さんは面接を一問一答の試験のように捉え、「正解」を答えなければならないと考えがちです。しかし、面接で評価されるのは、相手の話を理解したうえで的確に自分の考えを伝えられるか、です。これが仕事で求められるコミュニケーション力だからです。そのため、面接のときに相手の質問が理解できなかったら「いまのご質問は○○についてお答えすればよいでしょうか」と確認してもかまわないのです。


――なるほど。では、面接で注意すべきことは何でしょうか。

 学生側の視点と企業側の視点とのズレに気付くことです。例えば、「自分が成長できる環境」を重視している学生がいるとしましょう。それ自体がよくないわけではありませんが、自分の思いに軸足を置きすぎることには注意が必要です。なぜなら、企業によっては、自分自身の成長を重視する人よりも「御社だからこそ入社して貢献したい」という人のほうが入社後に活躍してくれそうだと考えるからです。また、ほかの企業にも通用するようなことを話すと、「当社以外でもいいのだろうな」と思われてしまいます。「御社だからこそ」という志望動機を伝えるには、その企業の特徴・強みを理解するための企業研究が不可欠なので、しっかり準備してください。
 


伝えることを明確に


――面接では、自分の日本語力に不安を感じる留学生も多いようです。その点はいかがでしょうか。

 企業が留学生に求めるのは、正しい日本語を使えることではありません。IT企業に就職したあるトルコ人留学生は、本学大学院入学時に日本語があまり話せず、いざ就職活動をする段階でも十分な会話力は身についていませんでした。その人は就職活動をふり返って、次のように話してくれました。「難しい言い方はしないで、できるだけ内容で自分をアピールしたいと思いました。日本語の正しさよりも面接官に自分の考えを伝えることが大事だと思ったからです」と。日本語力を気にしすぎず、自分が伝えたいことを明確にできたので、企業からの評価につながったのだと思います。


「経験から学び次に活かす力」


――なるほど。面接では「自分の考えをわかりやすく伝える」ことが重要ということだと思いますが、そのためのポイントは何でしょうか。
 
 自分の経験談をアピールするときは、「Why」「How」「So What」を明確に伝えることです。どのような経験でも、なぜそれに取り組み(Why)、どのように困難を乗り越えて(How)、そこから何を学んだのか(So What)を具体的に伝えましょう。特に「So What」は「経験から学び次に活かす力」のアピールとなります。日本企業は「経験から学び次に活かす力」のある人は成長可能性が高いと判断しますので、「So What」もきちんと伝えられるようにしましょう。


失敗を恐れない


――そうなのですね。最後に留学生へアドバイスをお願いします。
 
 面接で失敗しない学生は一人もいませんので、失敗を恐れないでください。面接に関しても、失敗(経験)から学び次に活かすことでコツがつかめるようになります。また、一次面接できちんと答えることができなかった質問は、次の面接で再度質問されることがあります。企業は「前回の面接の後にちゃんと調べてきたかな」と試すわけですね。そこでしっかり答えられれば、「反省してきたのだな。それくらい志望意欲が高いのだな」と評価につながります。失敗しても落ち込まずにチャンスだと捉えて「ふり返り」と「改善」に挑戦してみてください。




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