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邢 志強 氏 
(国士舘大学 21世紀アジア学部教授) 


受け入れの統一基準作り急務  留学生と日本人との交流の場が必要

 ――留学生受け入れの将来像について。
 日本にはまだ留学生の明確な受け入れ基準がないため、現在様々な問題が起こっています。特に日本語学校や大学で安易な「穴埋め」の募集を行ってきた結果、母国で大学に入れなかった一部の人がお金を稼ぐために来るような事態が発生しています。そのため日本では留学生へのイメージが非常に悪くなり、本当に勉強しに来た人たちがあおりを受けています。
 しかし、これは実は入管の審査の甘さが招いた事態でもあるのです。緩めては締めを繰り返す審査のあり方や、日本国内の各入管によって審査基準が違うこと、中国内でも大使館と領事館では審査基準や求められる書類が違うことなど、同じ法務省入管にもかかわらず、そのような違いがあるので入管政策に疑問を持つ人が多い。私はこれは大きな問題だと思いますので、早期の改善を求めています。
 一時的な取締りを強化するだけでは、根本的に問題を解決することはできません。日本政府は早急に、入管政策のみならず、募集政策や移民政策を含めた留学生受け入れの統一基準を作るべきです。今後の留学生数の増加は間違いないにもかかわらず、日本ではいまだに長期的な留学生受け入れ政策の青写真は見えてきていません。世界では既に激しい留学生獲得競争が繰り広げられていますので、日本政府も早急に政策を整備しないと出遅れてしまいます。
 今こそ、日本政府や国民は留学生を受け入れる意義を再認識するべきです。彼らを受け入れる意義は、日本のためになるから、ということにあるのではないでしょうか。
 例えば、かなりの留学生が日本に残って仕事をしています。彼らは二国間の架け橋になって、普通の日本人にはできないことをしているわけですから、日本にとっては大きなメリットでしょう。また、彼らは母国に戻ってからリーダーになる人も少なくないし、日本の小説やアニメなどを翻訳したり、日本語や日本文化を教えたり、対日交流のパイプ役を務めたり、日系企業で働いたりしている人もかなりいることなどを考えれば、日本の対外的イメージ、国際的影響力の向上にとっては計り知れないメリットがあるのではなかろうかと思います。
 しかし、日本人は、彼らに自国の文化を知ってもらう努力をあまりしていません。日本は資源もないのに、戦後豊かになり、多くの世界一のものを持つに至っています。なぜそうなったのか、日本の良さをもっと留学生に知ってもらえるように宣伝するべきです。それによって日本に来る人が多くなればさらに交流も増え、国際関係もよくなっていきます。今、日中・日韓等の間に横たわっている多くの誤解を解くには交流するしかありません。せっかく留学生が日本に来ているのですから、彼らが日本人と交流できるような場をもっと作っていく必要があります。


けい・しきょう 
中国生まれ。大連外国語学院日本語学部卒。1985年北海学園大学留学。1992年より北海学園北見大学講師、助教授を経て、2002年現職。専門は日本語文法論、日中言語対照研究など。