Top向学新聞日本で働く留学生OBたち>姜 乃栄さん


姜 乃栄さん(韓国出身) 
(日本希望製作所) 


会って話せる場が必要  経験を恐れない勇気を

――留学を通して得たものとは。
  留学は私の人生を深めてくれたと感じています。日本社会に慣れていない留学生は、社会的弱者の立場に立ちます。自分が身をもってその一人になることではじめて高齢者や障害者など周りにいる社会的弱者の存在にも気づくのです。若い時代にはそういう体験をしておくことも必要でしょう。
  留学生が最初から日本社会に入ることは難しく、日本人と会って交流する機会がなかなかありません。それで我々の団体では毎月、日本人と留学生がグループで例えば下町の散策をし、どういうことを感じたか、写真を撮ったならなぜその写真を撮ったのか、帰ってきてから話し合い、相互理解を深めるようなイベントを開催しています。日韓の地域交流を深めるには、そういった個人ベースの交流が必要です。
  留学生の立場から考えれば、本当に苦労したと感じるところには残りたくないはずです。その意味では最初に留学を決めた時点から支援が必要でしょう。経済的問題よりもむしろ一番の問題は、出会いの機会がなく寂しさを感じてしまうことです。日本に来ているのに同国人どうしで活動する留学生会が各大学にありますが、それらは寂しいから作っていると考えられなくもありません。奨学金も必要かもしれませんが、もっと中身のある支援、例えば、行けば常にだれかと会うことができ、誰かが話を聞いてくれるような拠点を作ったほうが良いと思います。生きていくのに苦労することは当たり前ですが、本当に人間的なニーズはもう少し違うところにあるのです。
  私は留学生時代には学校まで自転車で通い、「一日100円以上使わない運動」をひとりで展開していました。土鍋で一日分のご飯を作り、弁当を持って日本語学校に行き、夜は土鍋の底についたお焦げを水を入れてふやかして食べるとおなかいっぱいになりました。おかずは納豆ばかりで、風邪をひいたら牛丼屋に行きしょうがを沢山盛って食べたものです。当時はすべて前向きに考えることでやっていました。経験を恐れるのでなく、突破する勇気が必要です。せっかく留学した勇気があるのですから、あらゆることに積極的にぶつかっていってもいいのではないでしょうか。
  自分のいる社会は自分の家なのですから、何かシステム的に問題があるとしてもそれで置いておくのではなく、自分で考えみるべきです。留学して自分だけ成功すれば本当に幸せなのか。私は日本も母国も同郷だと考えています。あらゆるサービスはそれを提供する人がいないと受けられません。結局は人間同士の付き合いであり、自分もその社会で必要とされている存在なのだと気づくことが大切なのです。



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