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林 志英さん(中国出身)
(株式会社KAJIN 代表取締役)
人の役に立ち喜ばれたい 留学生は多くの日本人と交流を
――留学時代に学んだものは。
日本の社会に飛び込み、溶け込む積極性が大切だと学びました。今でも当時お世話になった日本人のかたと親しいお付き合いを続けています。一人の人間として、互いに良いところを吸収しあうことが大事です。
日本に長くいる外国人は二つのグループに分かれると思います。いつまでも自国の文化に閉じこもったまま生活している人と、無意識のうちに日本社会に溶け込んで見た目もふるまいも発想も日本人と区別がつかなくなったような人です。やはり成功しているのは溶け込んでいる人のほうが多いと思います。例えば私のビジネスで扱っているフォーマル子供服は日本文化にかかわる商材です。日本人はきちんとTPOをわきまえてその場に合う服を着ていくのですが、そういう習慣や嗜好をつかんでいないと成功できないのです。
――起業の経緯は。
子供のころからいずれ起業したいという志は持っていました。大分大学に留学し日本的経営などの組織論を学びましたが、弊社の経営もどちらかといえば日本的です。儲けより信頼を大切にし、社員のモチベーションを上げ、目標に向かってチームワークでやっていく。人材を大切にし、長く一緒に生活していきましょうというスタンスです。厳しい時にも立ち戻れるそのような原点があるかどうかが重要なポイントです。
――これから起業を志す方へのアドバイスは。
自分の好きなことから始めるのがよいと思います。好きではない一時的流行のものを儲けのために売っても長続きしません。仕事に情熱や愛情を持っているかどうかが長続きするかどうかの分かれ道です。好きでやっていれば仕事自体苦にならず楽しめます。
そして何より、人の役に立ち喜ばれたいという気持ちが大事です。私は小さいころ貧しかったので、晴れ姿の写真がほとんどなかったのです。ですからぜひ自分の子供たちの世代には、そういった大切な写真を残せるようなお手伝いができればという思いで仕事をしています。
例えば0歳から1歳、2歳と、お子様の成長と共に何度も弊社の商品を買って写真を送ってきて下さるお客様がいます。そのたびにお子様の成長が見えて嬉しく思います。お客様の大切な日に使う商材ということもありますが、感謝されると私もこの仕事をやっていてよかったなと思います。
留学生の皆さんはぜひ日本人と多く交流してほしいです。人生の先輩と交流する中で、社会で生きていくうえでの心構えや、日本人の好き嫌いなど様々なヒントやアドバイスが頂けるのです。「日本人にこういうことを言ったら嫌われる」という注意点はたくさんあります。自分の意見をはっきり言う場合でも、まず感謝してそれから意見を述べるなど、話の持って行き方によって全然進み具合が違ってきます。そういったことは日本人から教わらないと分かりません。
私の場合、留学生時代に親代わりのように可愛がって下さった方がいて、「女性は独立して自分を磨かなければならない」という考え方に大きな影響を受けました。日本舞踊を習いに連れて行って下さり、「発表会ではこういう衣装を着るのだ」などと様々なアドバイスを頂きました。そのおかげでここまで来ることができたと思います。こうした勉強の積み重ねによって日本でのチャンスを見いだせるのではないでしょうか。
TPOは生活の中で学ぶしかありません。ロータリークラブの奨学生のパーティーに呼ばれた時は「こういうときはきちんとした服装が良い」と注意を受けたこともありました。日本の法事では必ず黒い服装ですが、このような文化への理解はビジネスに必要なことです。結婚式や葬式などは、親しい日本人がいなければその場に呼ばれること自体がないので経験のしようがありません。私は身元保証人の家族と親しく付き合っており、家族の一員として受け入れて下さっているので、葬式の時にも私を親戚の席に座らせて頂けました。そういう人間関係ができてほんとうの日本文化が分かり、ビジネスチャンスがどこにあるのか気づくこともできるわけです。
留学生の皆さんは、せっかく日本に来ているのですから日本人と多く交流し、もっと自分の成長にプラスになるようなお付き合いの輪を広げていってほしいと思います。
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