Top向学新聞日本で働く留学生OBたち>シング プラバカル さん


シング プラバカル さん (インド出身) 
(トーヨービールス有限会社) 


「何ができるのか」が大事 日本では背中で仕事を教える

――海外と比較して日本企業の特徴は何でしょうか。
 やはり日本の技術力は非常に高いレベルにあると思います。しかし、ビジネスの進め方は海外と違います。これまでの体験から、日本企業は実態とかけ離れているにも関わらず、事業を計画に沿って進めようとしている時があると感じます。インドだけではなく世界の多くの企業は、計画を大事にしながらも適切に状況を判断します。重要なのは計画通りに事業を進めることだけではなく、結果を得ることだからです。

――日本企業の海外進出における課題は何でしょうか。
 世界へ出て、海外の習慣や文化を学ぶことが必要だと感じます。語学の場合、世界中で使われている英語を学ぶべきです。例えば、あるIT系企業の採用では、プログラム開発は半分以上が英語で行われているにも関わらず、採用担当者が英語を理解できていないケースがあり、本当に優秀な人材を採用できているのか疑問を感じます。

――インドには優秀な人材が多く、世界中の企業が集まっています。インドと日本の教育の違いは何でしょうか。
 例えば、日本の大学は出席回数を評価に含めることが問題だと思います。試験の点数が多少悪かったとしても、出席回数が成績に反映されて卒業できるのです。しかし、それは本当の教育ではないと思います。授業に出席したとしても、真面目に授業を聞かない学生や居眠りをする学生がいるからです。大学で勉強せず専門性がないまま社会に出て、何ができるのでしょうか。インドの大学は3年間ですが、試験が最重要視されます。勉強したことをどれだけ理解しているのかが問われ、厳しい試験に合格しなければ次のステップに進むことができません。合格するまで4年、5年と勉強します。インドでは、「あなたは何ができるのか」が最も大事なのです。

――日本社会の特徴は何でしょうか。
 オーストラリアにも留学していたのですが、オーストラリアや香港は個人主義の傾向が強く、日本はチームワークをとても重視している点が一番の違いだと思います。あるプロジェクトを実施するにあたって、オーストラリアでは各自の提案の中で最も優れたものを選ぶ手法が多かったのですが、日本では一人一人の意見を尊重し、意見を集約しようとします。時間がかかるなどの問題点もあり最初は馴染めませんでしたが、全員が方向性も結果も共有できるので次第に大事なことだと思うようになりました。それぞれの国の特徴があるので、一慨に良し悪しを付けることはできませんが、やはり日本文化は海外と比べて特徴的だと感じます。

――一方で、日本はこれまで世界に大きな影響を与えてきました。日本企業の強みとは何ですか。
 学生だった頃、日本のある居酒屋でアルバイトをしていたのですが、洗い物やトイレ掃除が一番最初の仕事で驚きました。インドではトイレ掃除は誰もやりたがりません。どれだけ優れた会社で給料が高かったとしても、トイレ掃除が業務内容に含まれていれば、インド人の多くはすぐに会社を辞めてしまうでしょう。しかし、その居酒屋では社長を含めた上司も皆、トイレ掃除をしていました。居酒屋に限らず、日本では人の上に立つ立場の方が、率先して汚れ仕事をこなします。インドでは、上司は指示をするだけのことが多いのですが、日本では背中で仕事を教えてくれるのです。第二次世界大戦後、日本は何もないところから短期間で急激な成長を遂げました。皆が一生懸命に努力するという姿に、その秘密があるのだと思いました。その事が分かってからは、私も「何でもやります」という気持ちを持つことができました。

――就職活動に苦戦している留学生にアドバイスはありますか。
 自分を信じることが大事です。自分を信じる力は、母国を離れ様々な困難を乗り越えてきた留学生の強みだと思います。また、日本で本当に就職できるのか不安があると思いますが、これからのグローバル化の時代において、日本人だけでは対応できず、留学生の力が必要で活躍するチャンスはあると思います。しかし、経済状況が厳しい場合には、企業は人員を削減せざるをえません。その時、「あなたは何ができるのか」が問われます。企業が必要とする人材になるために、自分の武器を磨いて成長していってほしいと思います。



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