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マンタル ジョアキムさん (米国出身) 
(早稲田大学広報課) 


『こころ』を原書と英語で読破
日本文学の魅力を伝えたい


画像の説明


日本文学を読み漁る


 夏目漱石、谷崎潤一郎、吉川英治、村上龍・・・。これまで日本語版・英語版を含めて日本人作家の作品を読んだ数は数十冊になる。「日本の文化と歴史を勉強したい」と来日してもうすぐ3年になるが、日本への興味は深まるばかりだ。
 最初に日本に興味をもったきっかけは、子供のころにテレビで見たドラゴンボールだ。中国の西遊記をモチーフにしたドラゴンボールを入口に、その背景にある日本・中国文化に関心を持つようになった。大学3年生から日本文学の勉強を始め、源氏物語、吉川栄治の『宮本武蔵』、夏目漱石の『こころ』などを読み漁るようになる。しかし当時は日本語が全くできず英語に翻訳された著作しか読むことができなかった。「作家はどのような日本語を使っているのか。日本語で読まないと作家の本当の考えが分からない」と日本留学を決心。米国ワシントン州のピュージェットサウンド大学を卒業後、東京の日本語学校に入学した。
 日本語学校在学中の1年半で日本語能力試験のN2を取得して卒業。そのまま日本で民間企業に就職したが、「文化に興味があり、できる限りその分野に近い仕事がしたい」と今年1月から早稲田大学広報課に転職した。
 転職活動期間中に独学で日本語を猛勉強し、日本語能力試験のN1を取得。今では夏目漱石の『こころ』を原書で読むことができるようになった。「原書と英語版とでは全く違う。漢字はひとつひとつの文字で意味をなす表音文字で、物語の理解の仕方が異なる。日本に住んでいることもあって、日本人の心情も理解しやすい」と話す。
 


欧州視察


 今年3月には大学の他のメンバーとともに訪欧する機会を得た。世界における早稲田の価値を向上させるべく、世界大学ランキングをリードする英国、フランス、ベルギー、スイスの大学を調査するためだ。「日本の大学はこれまで国内市場がメインだったが、海外では国境を越えた大学間競争が激しい。ソーシャルメディアの活用などマーケティング戦略の重要性が参考になった」と話す。
 


夢は教授


 きっちりと仕事をこなしながら、現在も日本文化・歴史の勉強を欠かさない。今最も関心がある作家は明治~昭和にかけて活躍した泉鏡花だ。「明治維新後、明治政府は日本の宗教や思想を統一しようと試みていた。泉鏡花はそれに対抗するため、『妖怪』の物語を通して、元来日本には多様な信仰や民話があることを示した」と熱っぽく語る。ゆくゆくは日本文学の博士号を取得し、教授になることが夢だ。「世界中で教鞭をとり、日本文学の魅力を伝えたい」と目を輝かせる。


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