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向学新聞2022年7月号記事より>

留学生の就職支援
第4回 対談③ 在留資格の注意点

栗原由加氏

栗原由加 氏
神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学部 教授

宮本健吾 氏,10%

宮本健吾 氏
宮本行政書士事務所
行政書士

 今回は、留学生の在留資格の面から、よくある問題や、気を付けるべきことについて、栗原氏が聞き手となり、行政書士の宮本氏にお話を伺った。(敬称略)

留学生によくある在留資格の問題

栗原)多くの留学生は、資格外活動許可を取って、在学中にアルバイトをしています。「学校を卒業したらアルバイトをしてはいけない」というルールについて、具体的にはどういうことか、教えていただけますか。

宮本)これは、学校を卒業する時点で、就職先が決まっていない留学生によく起こる問題です。卒業する時点で就職先が決まっておらず、引き続き日本に残って就職活動を続けたい場合は、在留資格を「留学」から「特定活動」に変更する必要があります。3月に学校を卒業する留学生が、持っている「留学」の在留資格の期日がその年の5月ころまであったとしても、学校を卒業したらアルバイトができなくなります。卒業後も引き続きアルバイトをしながら就職活動するためには、例えば、3月31日(教育機関での在籍の末日)になる前に「特定活動」への切り替え申請をしてください。切り替えが完了して、資格外活動許可を取れば、またアルバイトをすることができます。この在留資格の変更手続きをせずに、卒業後も「留学」の在留資格のまま、就職活動やアルバイトをしていると、無事に就職先が見つかって、就労のための「技術・人文知識・国際業務」(以下、技人国)の在留資格に切り替えようとしても、許可が下りない可能性があるので注意が必要です。

 在留資格を切り替える時に、アルバイトの給与証明書や(住民税の)課税証明書が求められることがあります。特にベトナム人の方に多いようです。在留資格変更が不許可になった場合、一度帰国してから認定証明でまた日本に来るというリカバリーの方法もありましたが、ここ数年は、コロナで新規入国ができない状況だったため、再び来日できずに諦めた方もいました。

栗原)留学生は、アルバイトのやりすぎにも、注意しなければいけませんね。

宮本)はい、規定時間以上働いてしまうことも注意してほしいです。課税証明書・(住民税の)納税証明書を求められて、オーバーワークがばれてしまうケースがあります。アルバイトをしすぎると、本来の在留目的である学業がおろそかになりかねません。週28時間をオーバーしてしまっても、学業をしっかりして出席状況や成績が良ければ、謝罪文や今後の改善策(法令の遵守について)を提出して、「留学」の在留期間更新や、「技人国」への在留資格変更手続きの際に許可が取れる場合もあります。ただ、アルバイトをしすぎている留学生で、成績が良い方はほとんどいない印象です。週28時間の就労時間の制限があるのは、本来の「留学」としての在留目的であるが学業が疎かにならないようにということと、規則制定当時としては、日本人の仕事を減らさないように、という観点もあるようです。

栗原)在留資格の切り替えでは、他に、どのような問題がよく起こりますか。

宮本)他には、年金の不払いの問題があります。支払いの猶予申請をしていなかったために、在留資格の変更が不許可になるケースがあります。留学生が日本語学校に在籍している期間は、先生が細かく指導・サポートしてくれるため、留学生もしっかり手続きをできていることが多いです。しかし、専門学校や大学に進学後、もしくは来日後すぐに専門学校や大学に入学した留学生は、あまり指導されずに、猶予申請をしていない留学生が多いようです。手続きは留学生にとって難しい印象があったり、もしくは将来年金不払いが就職時や永住申請時にどのように影響するかイメージできない場合が多いので、学生任せではなかなか行き届かないと思います。年金の不払いは、「特定技能」や「技人国」への在留資格変更申請への影響だけでなく、将来的に永住権取得の時にも影響してきます。同じ「払っていない」という状況でも、単なる未納と特例を使って払っていないことは全く違います。
 
 来日して間もない留学生は、いずれ帰国するつもりで年金は自分に関係がないと思うかもしれませんが、日本で学ぶうちに日本で働きたくなったり、将来は永住権取得も考える可能性もあります。数年先の自分の人生に、大きく影響する事であることを、しっかり認識してもらう必要があります。

就職活動で気を付ける点

栗原)就職活動では、会社から「内定」と言われたとしても、在留資格が取れないケースがありますね。どのようなことに気を付けるべきですか。

宮本)多くの留学生が「技人国」の在留資格の取得を目指しますが、これは「担当する業務に学校で学んだ専門性が必要とされるか」がポイントになります。もちろん、在留資格が取れる業務内容か否かもポイントになります。特に、飲食店の接客やキッチンの業務だけで申請して、不許可になるケースが多数見られます。一例として、栄養系の学部で学んだ留学生が、調理の業務内容だけでは不許可になりますが、学部で学んだ栄養に関する知識を生かして献立を考え、その延長で調理もするのなら許可が下りました。
 学部との兼ね合いでは、経営学部などは得られる知識の範囲が広いですが、観光学部などは限定的で得られる専門性も狭いです。将来を見据えて、やりたいことに関連する授業を取っておくと、将来の選択肢も増えます。他の学部の授業も履修できますので、1年のころから他の学部の授業ものぞいてみるのも良いと思います。

栗原)飲食店などのアルバイト先で、正社員にならないかと誘われるケースもあるようです。この場合も「技人国」の在留資格の取得は難しいと聞きます。「特定技能」や「特定活動46号」についても教えていただけますか。

宮本)そうですね、飲食店の接客や調理の仕事だけでは「技人国」は取れません。コンビニ店員も難しいです。
 
 「特定技能」は、専門性を求められない業務で働ける在留資格です。雇用主側からすると、必要書類の種類が多く、管理費として業者にもよりますが、月3万かかる場合もあります。雇用される外国人にとっては、「特定技能1号」での在留期間は、母国から家族を長期間呼べない(90日の短期滞在は可能)、将来の永住権取得の年数カウントに含まれない、などがあります。
 
 「特定活動46号」は、専門的な仕事以外もできるというプラス面がありますが、日本語N1以上という語学要件があり、ベトナムやミャンマーなど、非漢字圏の留学生にはハードルが高いです。中国・韓国の方の取得もあまり増えていないようです。その理由として、書類のレベルの高さや、「単純労働だけはできない」という点、また、パスポートに指定書が貼られ、指定書に勤務先の情報が記載されるため、転職した場合に転職先において特定活動46号で勤務可能か否かの手続きが必要となりますので、「技人国」と異なり転職が気軽にできない点があげられます。
 
 少し前に、飲食業の企業に応募した学生のことがニュースになりました。実際には、チェーン店の飲食店では、本社採用でないと、「技人国」は取りづらいです。また、入社後まずは店舗を経験させて、将来的に本社採用やマネージャー等に昇進させる場合は、例えば、「店舗現場で3年、その後本社勤務となる」という事業計画書が必要となります。

栗原)在留資格は、外国人が日本にいるための足場となる重要なことです。在留資格の問題に直面してから慌てる留学生が多いと感じますが、事前に分かっていないといけない問題ですね。留学生本人だけでなく、関わる教職員も正確に知っておくべきことです。

宮本)その通りだと思います。留学生を受け入れる学校では、入学オリエンテーションで、2、3コマ使ってきちんと説明して、理解させておいてほしいです。情報提供だけをしてあとは本人任せ、では危ないです。留学生は、「知らなかった」ということで、4年後の自分が後悔しないようにしてほしいです。
 
 留学生の皆さん、3年後、5年後、10年後の自分自身の夢を思い描き、自分の進みたい道を進むことができるように、勉強を頑張ってください。Do Your Best!



・留学生の就職支援
 第1回「現場から見える課題」
 第2回 企業の視点、大学の視点 対談①
 第3回 「仕事ができる人」とは? 対談② 
 第4回 対談③在留資格の注意点
 第5回 対談④キャリア相談とは
 第6回 対談⑤留学生の情報源
 第7回 対談⑥重視する点は知識ではなく、培ってきたこと
 第8回 対談⑦地域連携の中での留学生支援
 第9回 対談⑧インクルージョンについて考える
 第10回 対談⑨中小企業のマッチング
 第11回 対談⑩製造業の人手不足

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