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留学生の就職支援
留学生の就職支援 第8回 対談⑦ 地域連携の中での留学生支援

栗原由加氏

栗原由加 氏
神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学部 教授
キャリア教育センター副所長

大学コンソーシアムひょうご神戸
キャリア支援チームリーダー、国際交流・キャリアチーム次長
佐藤英代 氏、鈴木真紀子 氏
一般社団法人大学コンソーシアムひょうご神戸 

留学生の就職支援について、大学と企業の連携の必要性は多く語られている。また、連携の場としての大学コンソーシアムの活動も、各地域で実施されている。連携の現状や意義、間に立つコンソーシアムの役割について、大学コンソーシアムひょうご神戸の佐藤氏と鈴木氏にお話を伺った。

地域企業に就職したい留学生へのサポートについて

(栗原)今回は、地域企業に就職したい留学生のサポートについて、お話を伺いたいと思います。私は大学で、留学生の教育や就職支援を行っていますが、実は、地域企業に就職したい学生へのサポートが必要なのは、留学生に限ったことではありません。また、「サポート」とは、「エントリーシート作成や面接の準備の手伝い」に留まることではありません。地域企業への就職、定着の問題は、学生と大学と企業と地域という広い枠組みで考える必要があることだと思います。このことについて考えるためには、留学生に限らず広い範囲でのサポート事業を行って現状を知っている、大学コンソーシアムひょうご神戸の方にお話を伺う必要があると思っています。 まず、大学コンソーシアムひょうご神戸について、ご説明いただけますか。

(佐藤)私どものコンソーシアムは、地域と企業と教育機関をつなぐ役割として2006年に発足して、国際交流や地域交流、学生のキャリア支援など6つの事業を行っております。留学生に関する事業では、15年間留学生向けのインターンシップを行ってきました。インターンシップに必要な日本語研修やマナー研修なども実施しています。日本学生支援機構(以下、JASSO)の施設である兵庫国際交流会館の中にあり、JASSOや兵庫県の受託を受けて、大学の方々と考えながら、皆さんの想いを入れ込みながら事業を行っています。

(鈴木)今年の5月からは、新たに兵庫県の受託事業としてワンストップの相談窓口も始めました。コンソが間に入って、留学生を採用したい企業と、県内企業に就職したい留学生の両方から相談を受け、双方の橋渡し役を担います。

地域企業に就職したい学生の現状

(栗原)最初に、地域企業に就職したい学生の現状について、お伺いできますか。学生が苦労していることは何でしょうか。

(佐藤)地元の中小企業をあまり知らない、どのように出会って関係を深めたら良いか分からない、というのは日本人学生も同じですね。コンソでは、地元企業との交流会を企画したり、地元企業の社長さんの話を聞く機会などを作っています。

(栗原)就職相談では、「あなたは何がしたいのか」「もっと中小企業も調べてみて」とアドバイスされることがありますが、学生にとっては難しいことですね。中小企業に応募しないというよりは、よく知らない企業には応募しにくいという状況があります。1、2年の早い時期から、学生が中小企業の方の話を聞いたり、ざっくばらんに話をしたりできる場所を作ることができれば良いのですが。

大学の就職支援の現状

(栗原)各大学の状況はいかがでしょうか。苦労していると思うことはありますか。

(佐藤)留学生を多く抱えている大学は支援で悩んでいるケースがありますが、同じ地域の大学でも、他大学の情報を得る機会はあまり多くないようです。また、大学によって、留学生の人数や規模、マンパワーや学生のレベルの違いなど、事情が異なることが難しい点ですね。

(栗原)コンソでは、様々な大学が合同で参加できる活動を行っていますね。

(佐藤)留学生と日本人学生向けに、模擬のグループディスカッションと面接を行い、15校15社が参加しました。それをきっかけに、せっかく学んでいるので更にブラッシュアップする講座をしようとアイデアが出て、数校合同で続編の講座を開催したケースもあります。学生にとっても、自分の大学の学生だけでなく、他大学の学生と一緒に学ぶことで、刺激をもらえたり自分の位置を知ることもできるので、そのような横のつながりを持てることが、コンソのイベントの良いところで、また新しい可能性が生まれる場所だと感じます。

地域企業の現状

(栗原)地域企業の現状はいかがでしょうか。苦労していると思うことはありますか。

(佐藤)特に留学生採用の場合、企業が少ない出会いから自社に合った学生を効率よく探すのは難しく、大学名で採用を絞る方法は、あまり有効ではありません。留学生は母国の高校の協定校の大学に進学することも多いので、在籍する大学の偏差値で学生を判断をするのは難しいところがあります。コンソの事業に参画してくれている企業さんのほとんどは、大学名に関係なく広く様々な留学生と会ってみたいと仰います。

(栗原)確かに、これまでお会いした中小企業の採用担当の方々は、大学名のことは言わず、「一生懸命で、この会社のことが好きで、長く働いてくれる人が欲しい」と、皆さん仰っていました。

(佐藤)また、中小企業では新卒採用が少数で、いわゆる同期がいない・少ないケースが多いです。濃い人間関係の中で何かに躓いて煮詰まってしまい、退職に至ってしまうケースがあります。特に留学生の場合は、相談できる仲間がいるかどうかが、仕事を続けていく上で重要だと感じます。

昨年コンソで行った新しい企画として、入社前に地元企業の新入社員が横のつながりを作るスタートダッシュ企画を実施しました。違う企業でも、地元の同期仲間を作ることで、早期退職を防いだり、人材育成につなげていくことが狙いです。ただし、このような企画で良い効果を出すためには、地元経済団体や行政と協力体制をとって、地域のプレ新人研修として位置付けてもらい、本当に支援が必要な人に機会を提供できるように事業を進める必要があると感じています。

地域の連携と大学コンソーシアムの役割

(栗原)今の状況の中で、大学コンソーシアムひょうご神戸が担っている役割について、お話しいただけますか。

(鈴木)コンソは、学生と企業の間に入ってつなぐ役割ですが、他にも行政、士業、地域の様々な経済団体とのつながりもあるので、困っていることに合わせて情報を提供したり、関連する他のところへ繋げたりもできます。

(佐藤)最近は、日本で働きたい留学生と、留学生を採用したい企業とが出会う合同説明会などの機会は増えています。ただ、そのようなオフィシャルな場だけでは、必ずしもお互いの理解が良く深まるとは限りません。

その点コンソでは、普段から協力企業とのやり取りの中で会社の採用ニーズを聞いていたり、留学生からも普段の雑談の中で、「こういう仕事をしてみたい」という要望を聞いています。お互いのニーズの接点が見つかる機会が増える、可能性が広がると感じています。

(栗原)普段からの付き合いの場を作って、それが出会いの可能性を広げるということですね。コンソの協賛会員企業や協力企業は、普段からの関係性ができていて、留学生採用について意識の下地ができていると感じます。地域の連携体制や、システマティックなサポート体制を作ることは理想ですが、まずそのためには、普段から工夫して、お付き合いの仕組みを作っておくことが大切なのですね。



・留学生の就職支援
 第1回「現場から見える課題」
 第2回 企業の視点、大学の視点 対談①
 第3回 「仕事ができる人」とは? 対談② 
 第4回 対談③在留資格の注意点
 第5回 対談④キャリア相談とは
 第6回 対談⑤留学生の情報源
 第7回 対談⑥重視する点は知識ではなく、培ってきたこと
 第8回 対談⑦地域連携の中での留学生支援
 第9回 対談⑧インクルージョンについて考える
 第10回 対談⑨中小企業のマッチング
 第11回 対談⑩製造業の人手不足



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