<向学新聞2020年10月1日号より>
特集 留学生の就職活動2020(1)
7月時点での留学生の内定率は、日本人学生の半分以下
就職課へのアンケート調査(国際留学生協会)
▼留学生の内定率は日本人学生の半分以下(株式会社ディスコ調査)
近年では、不足する技術系人材だけでなく、インバウンド業界の盛り上がりで語学堪能で国際感覚のある留学生の採用ニーズがいつになく高まっていただけに、コロナによる打撃は大きい。
7月に航空業界大手ANAが新卒採用の中止を発表したことに現れているように、航空・旅行などの業界を中心に採用を絞る動きが出ている。
株式会社ディスコが実施した外国人留学生対象のアンケート(7月3日~7月19日実施、回答者343人)によると7月時点での留学生の内定率は約30%で、日本人学生の約半数となり、留学生の昨年同時期比では約9ポイント減となった。文理別にみると、理系が0.7ポイント減であったのに対し、文系が11.5ポイント減となり、文系学生が特に苦戦している様子がうかがえる。
▼「外国人留学生の就職活動について」 就職課へのアンケート調査
国際留学生協会は、留学生の就職活動について学校の就職課を対象に、ネットアンケート調査を実施した(9月1日~9月11日、有効回答49校)。回答内容をもとに、現在の留学生の就職活動の状況や必要な支援について考察する。
※留学生数がごく少数の学校では、さほど例年と変わらないという回答が多かった。
就職活動については、留学生が平時から苦戦している面がいくつかあるが、コロナ禍により、支援を受ける機会が失われ、弱点をうまく克服できないままの留学生が多いことがうかがえた。就職支援の視点からは、オンラインによるメリットもあるが、繋がれない留学生に対しては、状況の把握も難しくなっている。
ある大学からは、就職課だけでは連絡が取れないため、留学支援の部署と連携して連絡を取り就職支援を進めている、という事例が寄せられた。平時から、留学生とつながるルートを複数作っておくことの必要性が浮き彫りになった。主体的にキャリアセンター等に相談する留学生は良いが、相談にも来ない、本当に支援が必要な留学生が一定数いるからである。
▼コロナ禍の打撃
また、コロナ禍で、春休みに母国に帰国した学生が戻ってこれない、オンラインで選考を進めたが、対面の最終面接に参加できず不採用となった、という事例や、アルバイトが激減して、生活すること自体困難になっており就職活動に専念できない、という事例も寄せられた。
▼就職支援
就職支援の方法では、緊急事態宣言解除後の6月以降、対面や電話・メールでの相談受付と、オンラインでの相談や就職ガイダンス・企業説明会の実施の両方で対応している学校が多かった。2022年新卒学生への就職支援の予定としては、オンラインでの対応をさらに拡充するとともに、対面型での対応も再開する予定の学校が多いことが分かった。
<自由回答一例>
※本調査は、現場の生の声を拾うことに重点を置いて実施しましたので、自由記述の回答を、多く記載いたします。
▼留学生から寄せられる相談
・留学生就職ガイダンスなどに出席していない学生から、就職活動の進め方に関する相談が多い。
・7月のJLPTの試験が中止となった為に就職できるか不安。特定技能検定の各種試験も延期されている。
・ 7月日本語能力試験が中止になったにも関わらず、N2を必須(他の試験での代用不可)とする企業が多い。考慮してもらうことができない。
・説明会に参加したりエントリーをしたりしたが、その後で「うちは留学生を採用していません」と言われることがある。採用していないのなら、そのように明記をしてほしい。SPIが難しい。
・何社か受験しているが、内定を取れない、コロナ渦の影響で夏休み等が無く作品の準備ができない。
・就活そのものやり方というより、特定活動ビザを取りたい、という時に初めて相談に来ることが多いです。また、母国では長期的キャリアプランを持つこと自体が普通ではないので、日本の就活の在り方に疑問を持っているようだ。企業の日本語能力の要求が高いのもネックの様だ。
・ 日本に入国できない。ESの通過が困難。インターンシップの選考に通過しない。最終面接で落ちる。
・「内定をもらったが取り消された」とか「希望の職種で探しても求人がないので、枠をとっぱらって探し始めた」等の声が頻繁に聞かれた。
・履歴書、エントリーシートが相応に作成できない。
▼留学生の就職支援で困っている事
・日本語に自信がないのか、自ら企業に問い合わせをしようとはしない。
・今回の新型コロナの影響を受け、マナー講座、面接練習、講演会等の動機付けとなる行事が軒並み中止や規模縮小しての実施となったことで、動機付けが不十分なまま活動を迎えたり、日本特有の就職活動慣習やルールを十分理解できないまま活動をしている留学生がやはり例年より多いのではないかと感じる。
・今年はコロナ禍で本来帰国する学生も日本就職を希望している。そういう学生は日本語を話せないので苦戦している。
・航空(空港の免税店)や観光業などの求人がなくなった。今年は留学生は採用しないといわれた。
・理系なので推薦応募もありますが,そのルールについてなかなか伝わらないこともある。また留学生採用可の企業は多数ありますが、ほとんどの企業で高い日本語能力を求められるため、面接で不合格になるケースが多く発生している。
・ 春休みに帰国した留学生が、日本に入国できない。
・日本語力が不足している留学生が例年以上に苦戦している。
・留学生へ就活方法を教えても一緒にやってあげないとやらない。マンパワーが足りない。50名を1~2名のスタッフで対応しているが兼務が多くそれだけに時間を費やせない。
・もともと少なかった留学生の求人がコロナにより更に少なくなった。
・ 留学生は、日本人より、「自分が企業で働くことの意味」を重んじる傾向にありので、特定の業界・企業に偏りがちである。幅広く企業研究をしてほしいという意図が伝わらない。
・「先のこと」を見越して行動することができない。低学年次には「将来のこと」を見据えた準備ができていないし、就活では、書類提出日や面接日から逆算した準備ができない。アルバイトによる生活費、学費の捻出等の事情はあるのだろうが、「日本に留学する」というモチベーションやバイタリティが学生生活を通して削がれているように感じる。
・「留学生も採用する企業」ではなく、「留学生を採用する企業」の情報を学生に与えること。
・ 看護師希望で、施設が敬遠しているように感じ自信を持って活動が出来ていない。
・オンライ授業が多くキャリアセンターからの学生へのアプローチが難しい
・留学生の数が少ないのもあるが、接点が少なくあまり相談に訪れないこと。さらに、コロナ禍で予約制にしたところ全く面談希望の予約が留学生からないこと。
・留学生の多数は日本での就職を希望しています。本学では、日本の就活に早期から慣れるために、留学生就職促進プログラムを開講していますが、このプログラムの重要性に気付かない留学生が多数いることです。情報を送信しても留学生自らの価値観で閲覧するメールを決めており、留学生への周知の難しさを痛感しています。
▼留学生採用について企業に求めたいこと
・留学生採用について企業に求めたいこと: 事業戦略達成のために「留学生採用が効果があるかもしれない」という視点を持っていただきたい。
日本人と同列でのメンバーシップ型採用とともに、戦略達成のためのジョブ型採用を併用する場合、留学生は大いに「ポテンシャル」があるように感じる。
・日本語検定等のライセンスが必要であることがわかるが、時期的特性に応じて柔軟に対応していただけると留学生の就職活動の幅が広がると思います。
日常会話に困らない学生でも日本語能力を理由に不採用になるケースも多いことから,面接時などに質問の意図が伝わっていないと判断された場合は英語での質問に切り替えていただくなどの配慮をいただければ,その学生の能力をもっと見ていただけるかと思・ 多文化共生を謳う企業は多いが、一方で「郷に入っては郷に従え」と日本企業文化への同化を強いている印象があるため、その矛盾点をなくしてほしい。
日本人と同等の日本語レベルや日本文化理解力のある留学生は非常に少ないことを理解してほしい。来日して数年で日本人と同じレベルを求めないでほしい。
・留学生採用を積極的に行う上で、仕事内容を詳しく明示してほしい。
・: 留学生を受け入れた実績のない企業は就労ビザの認識が少ない
・採用については特に求めることは無く感謝をしています。
・日本語の文章表現については、日本語能力検定N1の学生でも誤りがあります。履歴書やエントリーシートで判断せず面接で人物判断を願いたい
・留学生を採用するにあたってのフォロー体制の詳細な説明
・キャリアプランの提示、留学生を積極採用したい理由の提示
・入社して働いている留学生からの話など、外国人材としてどのような仕事をするのか具体的な入社後のイメージができるような場を設けてほしい。
います.
・ 外国人留学生採用実績の積極的な開示
・留学生を採用するために必要な在留資格の変更手続きを把握されていないことがあるため、手続き方法などの把握はお願いしたいです。
・ 特定活動ビザ(就職活動)を取得させインターンシップ、研修という名目でビザ失効まで就業させようとする企業が散見されます。その後に正社員採用してもらえると思い、他の企業への就活をしないため、半年で切られて、ビザも失効し、就職先がなく帰国せざるを得ないというケースがあります。企業は特定活動ビザをそのような形で利用しないでほしいです。
・極力4月1日には就労ビザ変更が完了し社会人としてスタートできるよう余裕を持った採用計画をしていただきたい。
▼今年の留学生の就職支援で効果があったこと、良かったこと、良い対策方法など
<プラス面や効果的な対策>
・就職ガイダンスや学内企業説明会は、オンラインの方が出席率が高い傾向があった。
・チャット機能などの活用で、相談のハードルが下がった。
・オンラインでの説明会が急増し、遠方でも参加しやすくなった。
・就職課だけではなく、国際センターや担当教員などとの連携を強化させた。
・現在、70名の留学生に対して就職支援を実施しています。基本的には2回~3回の対面面談を実施しながら求人とのマッチング、履歴書添削、面接演習、内定通知受領後の在留資格変更手続きまで一貫した支援を実施しています。行政書士との連携も非常に大切だと痛感しています。現在3名の行政書士と連携している。
・SNSを利用して面談したが、学生が在宅しているので連絡が取りやすく、また時間を気にせずにできた。
・とにかく履歴書の作成を進めた。そうすることで、応募のハードルを下げる狙いがある。成果はまだ見えていない。
・学生の日本語の不十分さを補うために企業と学生との間に立つこと。留学生の資格変更に必要な準備について、学生に代わり企業側に説明すること。
・今年は就職ガイダンスの代替企画で動画配信をしましたが、特定活動ビザ(就職活動)の申請については理解してくれる学生が増えました。以前は書類をそろえるだけで苦労していました。ウイチャットは中国人留学生への情報周知に有効なようです。
・早期(大学院修士1年、学部2・3年)から就活に取り組み、日本式の就活になれれば、希望の企業から内定は出ること。
・就職情報サイト上で留学生を積極採用している企業の検索方法を伝えたこと。
(2)に続く
→ 特集 留学生の就職活動2020(2)を読む
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