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非接触給電システム 


バス停でプラグを刺さず充電 電動バスの導入を後押し

 今月は、ワイヤレスでバッテリーを充電できる「非接触給電」の開発状況と将来展望について取材した。


航続距離の問題解決

 非接触給電システムの開発を行う、昭和飛行機工業株式会社の小川氏にお話を伺った。

――非接触給電とはどのような技術ですか。
 小川 電気自動車(EV)や電動バスの充電をワイヤレスで行えるシステムです。現在プラグ式充電のEVは普及し始めていますが、充電するときにはいちいち運転手が降りて充電プラグを差し込まなければなりません。また、電動バスを一回の充電で一日走れる設計にすると、バッテリーが大きくなり、積載可能な人数が減ってしまいます。そこで、プラグを刺さない安全な非接触給電システムをバス停や駐車場などに一定間隔で設置して給電することで、航続距離の問題を解決しようというものです。
 将来的には、高速道路などで車が走行中に給電しながら走る「走行中給電」も想定しています。こうすることで充電操作なしで長距離を走行することができます。これは現在研究開発中です。

――他に具体的な応用例はありますか。
 小川 非接触給電は磁界を利用しますので水中でも給電でき、ショートしないので安全です。水中の長期観測機器に定期的に充電するための水中ロボットなどに利用できます。また、自動で走行し始め、時間が経ったら定位置に戻り非接触充電するロボットが実用化されており、自動車工場の中を自動で走る部品運搬台などに応用できます。

――交通機関を用いた実証実験が進んでいるそうですね。
 小川 国土交通省の電動バス運行実証実験に使われたプラグイン型ハイブリッドバスに、弊社の装置が採用されました。また、早稲田大学が障害者やお年寄り向けに開発した低床式の先進電動マイクロにも採用されています。今後EVで非接触給電が汎用的に使われるようになる可能性があり、弊社は先駆けて新しい市場を作ることを目指しています。 


実証実験で成果

 非接触給電を用いた電動バスの実証実験について、国土交通省の中村氏にお話を伺った。

――実証実験の成果を教えてください。
 中村 国土交通省では2010年度に電動バスや超小型車の導入に関する実証試験を行い、東京と奈良で非接触給電方式を用いたバスを運行させました。東京では丸の内口~晴海埠頭間を走る路線バスを使い、奈良は春日大社と奈良公園を循環する路線で、高齢者や障害者の方を対象とした期間運行を行いました。給電は終点のバス停で行いました。送電側のコイルに対して、横の誤差が70ミリ以内に停められればロスが少なく給電できることを確認しています。

――今後の開発の方向性は。
 中村 今回の実証実験は電動バスを都市の交通やまちづくりに活かしていくという観点から行いました。実験で使ったバスは支障なく運行できることが確認できましたが、本格的な導入に向けて、走行可能な距離を延ばすことや充電をよりスムーズかつ的確に行うことができるようにすることなど実際の運行上のニーズに合わせた技術開発も進むものと期待しており、例えばスイッチを押したりしなくても自動で充電し始めるような技術を開発すればもっと運行時に役立つと思います。
 また、電動バスの導入は充電施設の整備とあわせて行う必要があることから、バスの定時性確保等を図ることが重要であり、このことは都市交通としてのバスにとっても重要なことです。
 今後は都市における交通へのニーズや自動車の技術開発の動向も踏まえつつ電動バスの導入を後押ししていければと考えています。



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