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エリーカ・プロジェクト 

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エリーカ・プロジェクト  


世界最速の電気自動車  家庭用コンセントで充電可能


 今月は、「エリーカ・プロジェクト」を推進する、慶応義塾大学の吉田博一教授と清水浩教授にお話をうかがった。


環境問題の解決目指す


――エリーカ・プロジェクトとはどのようなものですか。
 吉田 エリーカとは「Electric Li-ion Battery Car」の略で、電気自動車の実用化に向けた開発を行う産学協同のプロジェクトです。本学と民間企業30数社とが連携し、昨年4月からスタートしました。発足の背景には環境問題があります。昨今の異常気象を見ても明らかなように、地球温暖化現象が顕在化していますが、CO2の排出源の一つである自動車は増加の一途をたどっており、特に中国では年間100万台くらいのペースで増え続けています。このままではおそらく温暖化は年々激しくなってくるでしょう。環境破壊がこれ以上拡大するのを食い止めるためにも、自動車の電気化は何としても必要なのです。私たちの試算では、自動車の排出するCO2は地球上の全排出量の20%を占めていますから、もし自動車が電気化できれば京都議定書の6%削減という目標も簡単に達成できるのです。


最高時速370・3㌔


――エリーカの特徴について教えてください。
 清水 原理的にはラジコンカーと同じで、電池、コントローラー、モーターのみで走ります。同クラスのガソリン車と比べて4分の1のエネルギー消費で走ることができ、もちろん排気ガスなどは全く出ませんから非常に環境にやさしい自動車です。さらに、従来の車に比べて飛びぬけて高い動力性能、加速性能を備えています。2004年3月にはイタリア・ナルドのテストコースで最高時速370・3㌔を記録しました。これは現時点でナンバーが取得できる実用的な電気自動車としては世界最速です。加速性能でも、例えばポルシェ911ターボという世界最速の部類に属するガソリン車が、時速0マイルから100マイル(160㌔)まで加速するのに9・2秒かかりますが、エリーカは7秒ですから、実用車の中で世界最高の加速性能といえるでしょう。
 また、家庭のコンセントから一晩で充電できるという便利さも兼ね備えており、一回の充電で約300キロの走行が可能です。たとえ普及が進み全ての車が電気自動車になったとしても、発電所の数は増やす必要はありません。というのも現在、発電所ではピーク時にダウンしないよう供給電力が設定されており、そのため夜間に余ってしまっている電力を使うだけのことですから、今までと変わりません。
 吉田 さらにもう少し視点を変えると、排気ガスを出さない車は建物に自由に出入りできるわけですから、例えばバスに使われる場合、停留所はショッピングセンターの中でもよいのです。ホテルでもロビーの中に自動車が入ってくるようになり、乗客は濡れることがなくなります。家の中に入れても良いので車庫も必要ありません。このように生活がずいぶんと変わってしまい、従来の車の概念そのものが変わってしまう可能性があるわけです。
 清水 また、設計の自由度が高いので、床が低くて乗り降りがとても容易な、お年寄りにもやさしい車を作ることもできます。
 エリーカは乗車スペースを広くするため、車輪の中にモーターが入る構造になっています。また、8輪車としたのも同様の理由からで、タイヤを小さくし二つに分割して乗車スペースを確保しています。原理が変わればやはり装置全体の設計も変わってくるべきですから、ガソリン車のまねをせず、電気自動車に一番ふさわしい構造を作り出したのです。結果的には8輪車にしたことでカーブを曲がるときの安定性が圧倒的に向上し、さらに乗り心地も向上しました。私たちとしては、これらの特長を備えた8輪車という形式を、以後の高級車のデファクトスタンダードにしたいと考えています。


ガソリン車より低価格に


――動力源にリチウムイオン電池を使用していますが、その理由は。
 清水 動力源となる電池には燃料電池などいくつか種類がありますが、重量あたりの蓄電量や放電量、寿命、資源の豊富さや安価さなどを考えると、リチウムイオン電池がベストだという結論に達しました。この結論は少なくともあと10年は変わらないでしょうし、それ以後も変わらないかもしれません。現在大型のリチウムイオン電池は高価ですが、将来大量生産されれば、電気自動車は部品点数と構造が簡単なのでガソリン車より低価格にすることも可能です。
 吉田 そこで私たちは、住宅やビルに使う蓄電池用として大型のリチウムイオン電池の需要があることに着目し、今年から電池メーカーとユーザーと協同で、自動車用と民生用の電池のセルを共通のものにするためのプロジェクトを新たに始めました。この計画が実現すれば電池が大量生産されて安くなり、一気に自動車の電気化につながっていくだろうと考えています。車体については現在実用化の前段階に持っていくための実証実験を行っているところですから、おそらく2、3年後には車が市場に登場してくるでしょう。
 

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